第19話

19話 告白
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2020/11/26 09:00
昌がまた抱きしめてくる。
あなた

(濡れた服が冷たい。だけど……
重なり合った体温にほっとする)

自然に昌に身体を預けているうちに、
私は答えを見つけた。
あなた

溺れたとき、私……。
心の中で、昌に助けてって、
願ったんだ

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
え?
少しだけ上半身を起こした昌が、
目を見張る。
あなた

私は、守らなきゃって、
強くならなきゃって、
そんなことばっかり
考えてきた……から

あなた

誰かに庇われたりするのは、
情けないことだって思ってて……

たどたどしく言葉を紡ぐ私を、
昌は静かに見守っている。

私は自分でも持て余しているこの感情を、
言葉にすることで整理していた。
あなた

守られる自分なんて、
これまで少しも想像してなかった
はずなのに、私……

あなた

プールの中で、
昌の顔が頭に浮かんで……

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
俺になら、守られたいって思った?
あなた

そ、そこまでは言ってないっ

あなた

(いちいち、セリフが
恥ずかしいんだよ!)

あなた

……っ、と、とにかく!
こんな私のことを守ろうと
してくれた昌が……その、あのっ

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
ゆっくりでいい。
だから、聞かせて。
あなたちゃんの気持ち
その言葉に、背中を押された気がした。
あなた

好き、だ!

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
……っ、本当に?
あなた

き、聞こえなかったとは
言わせないからなっ。この距離で!

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
じゃ、幻聴じゃないんだ?
あなた

違うって。気づくのが遅くなって、
悪かった……な

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
いいよ、焦らされても。
ご褒美くれるんなら
ふっと笑って、
昌がゆっくりと顔を近づけてくる。

そっと重なる唇に、
目を見張ったのは一瞬。
あなた

ん……

目を閉じて、昌のぬくもりに
身も心も委ねる。

やがて、名残惜しむようにそれが離れると、
昌は濡れた私の下唇を親指で拭った。
藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
好きだ
あなた

な、何度も言わなくても、
わかってる

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
でも、何度でも、
何回でも伝えたいんだよ
藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
親友を大事に思ってる
ところも、強いところも、
好きで好きでたまらない
あなた

(向けられる想いに、
じりじりと全身が焼かれている
みたいだ)

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
あなたちゃんのこと、
これからは俺が守るから
あなた

私も、昌を守るよ

藤ヶ谷 昌
藤ヶ谷 昌
あなたちゃん……ぷっ、
そういうとこ、やっぱ好きだ
額を重ねてくる昌と、
笑い合っていると──。
???
???
話は聞かせてもらった
私がプールで溺れたことを
みくるから聞いたのだろう。

姿を現したのは、真司先輩だった。
あなた

先輩……

私は身体を起こし、
ちくりと痛む胸を押さえる。
伊澄 真司
伊澄 真司
俺はあなたにとって、
憧れの先輩のままなんだろう
あなた

真司先輩……

伊澄 真司
伊澄 真司
俺では、藤ヶ谷みたいに、
お前にそんな顔をさせられないからな
あなた

そんな顔?

伊澄 真司
伊澄 真司
女の顔だ
あなた

……!

あなた

(女の顔って、
どんな顔だ!?)

反射的に顔を押さえると、
真司先輩はふっと笑みをこぼした。
伊澄 真司
伊澄 真司
本当は、最初からわかっていた。
そのヘアピンを見たときから

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