店長の真剣な瞳に、
鼓動がどんどん加速していく。
そう思いつつも、本当は予感があった。
紫乃くんを見ると、
口では潔いことを言いながら、
不安そうな顔をしていた。
しかも、テーブルの下でぎゅっと手を握ってくる。
答えが決まっていないのに、
紫乃くんの手を握り返すことは
許されない気がして……。
私はただ、彼の体温を感じていた。
***
告白の返事に悩むこと3日──。
時刻は午後9時。
上がりの時間まで、あと1時間を切っていた。
私は店内を掃きながら、
紫乃くんに話しかける。
紫乃くんはレジチェックといって、
お金の過不足がないかを確認する
作業をしていた。
なんとなく心配になって、
私はお店の外に出た。
それから店長の車を探していると、
ふと目の前に誰かが立つ。
にっこりと笑ったサングラスの男。
突然の登場に言葉を失っていると、
いきなり腕を掴まれた。
紫乃くんが男の腕を捻り上げる。
紫乃くんが私を抱き寄せ、
そのまま背に庇った。
カタカタと身体が震える。
そんな私に気づいてか、
紫乃くんは不審者を見たまま言う。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!