第3話

3話 付き合うなら、俺にしなよ
あなた

(心臓がバクバクしてる。
ただ、花言葉を言われた
だけなのに……)

カウンターに身を乗り出すようにして、
私をじっと見つめている常葉くん。

その瞳には、
熱が灯っているような気がして……。
あなた

(目が、離せない……)

常葉 紫乃
常葉 紫乃
あのさ、店長がタイプなの?
あなた

へ?

常葉 紫乃
常葉 紫乃
へ? じゃないから。
好きなの? 店長のこと
あなた

ち、違うよ!
店長は確かにかっこいいし、
笑顔にも癒され……ふがっ

常葉くんの手が私の口を塞ぐ。
あなた

(そんな乱暴な!)

常葉 紫乃
常葉 紫乃
そんなノロケ聞きたくないから。
この鈍感
あなた

……?

あなた

(なんで、私が怒られてる
んだろう)

理不尽だと思っていると、
常葉くんの顔がさらにずいっと近づいてくる。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
で、好きなの?
あなた

(そんなことよりも、
苦しいんですけど!)

私は常葉くんの手を
口からべりっと剥がした。
あなた

憧れてるけど、違うよ

常葉 紫乃
常葉 紫乃
でも付き合うなら、
店長とか言ってなかった?
あなた

あれは、周りの友達が
みんな彼氏持ちで……。
なんか自分も、誰かと付き合わなきゃ
いけないような気がして

常葉 紫乃
常葉 紫乃
彼氏は焦って作るもんじゃ
ないでしょ
あなた

(それはごもっともなんだけど……)

あなた

みんなに置いてかれてる
ような気がしちゃったの。
それでもう少し、
異性を意識してみようかと……

常葉 紫乃
常葉 紫乃
ふうん
あなた

(そっちから聞いといて、
素っ気ない返事だなあ。
というか……私はなんで律儀に、
常葉くんにこんなことを話してるんだろ)

途端に恥ずかしくなってきて、
私は仕事に専念する。
あなた

(ここはさっさと梱包して、
常葉くんを追い返すが吉!)

あなた

はい! 包み終わりましたよ

常葉 紫乃
常葉 紫乃
ん、どうも
私はリナリアの鉢植えが入った袋を渡し、
代金を受け取る。
あなた

ありがとうございました。
また来てくださいね!

常葉 紫乃
常葉 紫乃
……っ
にこっと笑ってお辞儀をすると、
常葉くんはなぜか顔を赤くした。
あなた

ん? 常葉くん?

その場から動こうとしない常葉くんに、
首を傾げていると──。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
誰でもいいんなら……さ
私から目を逸らしながら、
常葉くんは言葉を紡ぐ。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
俺にしなよ
あなた

……は?

常葉 紫乃
常葉 紫乃
だから、付き合うなら
俺にすればって言ってんの!
あなた

ええ!

常葉 紫乃
常葉 紫乃
返事は?
あなた

は、はい!

勢いで頷いてしまったあと、
私は我に返る。
あなた

いや、待って!
今のは条件反射──

常葉 紫乃
常葉 紫乃
もう言質とったから
あなた

刑事ですか!?

あれよあれよという間に
連絡先を交換させられて、
常葉くんは店の出口へと向かっていく。

店を出る寸前、
足を止めた常葉くんが振り返る。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
今日から俺が彼氏ってこと、
忘れないでよ
むすっとした表情、ちょっと赤い頬……。

恋とか愛とか、私にはまだわからないけれど。

私の胸は確かにドキドキしていた。