第2話

2話 この恋に気づいて
あなた

恥ずかしいです……

草間 樹
草間 樹
よしよし
店長が頭を撫でてくる。
あなた

(うう……店長、優しい)

草間 樹
草間 樹
あなたちゃんくらいの歳の子は、
みんな考えることだよ
あなた

店長も、そうでしたか?

草間 樹
草間 樹
俺? 俺は変わり者だったから
あなた

変わり者?

草間 樹
草間 樹
花が恋人だと思ってたんだ
あなた

あー……確かに店長って、
ときどき花に話しかけてますもんね。
それはもう、愛の告白みたいに

草間 樹
草間 樹
花を愛してるからね
店長はそう言って、
カウンターに飾ってある
パンジーの鉢植えを持ち上げた。

売り物ではなく、
店長が育てている花だ。
草間 樹
草間 樹
今日も綺麗に咲いてくれて、
ありがとう
あなた

(始まった。話しかけ始めると、
長いんだよね。でも……)

私は花と戯れる店長を眺めるのが、
癒しだったりする。
あなた

さて、外でも掃いてこようっと

私はお店を出て、
目の前の通りを掃除し始めた。

ここは駅に繋がる通りのひとつなので、
タバコの吸い殻や空き缶などのゴミなどが
よく落ちているのだ。

時刻は午後5時、
日は傾いているものの空はまだ明るい。
あなた

もし誰かと付き合うなら、
店長みたいな人がいいなあ

あなた

(優しいし、大人だし、
花に話しかけちゃうとか
可愛い一面もあるし)

あなた

なにより、癒し系だし!

???
???
へえ、あんた、
癒し系がタイプなんだ?
あなた

そりゃあ、まあ。
一緒にいるなら、居心地が
いいほうが……って!

あなた

(私は今、誰と話してる!?)

勢いよく振り返ると、
つんとした顔をしている
イケメン男子がひとり。

彼は常葉 紫乃ときわ しのくん15歳。
私より1学年下の他校生で、
この花屋の常連さん。
あなた

と、常葉くん、
いらっしゃいませ……

常葉 紫乃
常葉 紫乃
今日はリナリアが
欲しいんだけど
あなた

はい、ただいま!

常葉くんは高い頻度で、
お店に花を買いに来るので、

いつの間にか、
客と店員、年齢差も関係なしに
タメ語で話す仲になっていた。
あなた

(初めは紫のライラック、
この前は白いツツジか……)

ライラックには恋の芽生え、
白いツツジには初恋なんて花言葉がある。

他にも、常葉くんが買っていく花は
どれも恋にまつわるものばかり。
あなた

(意味、わかって買ってるのかなあ?)

疑問に思いつつも、
私はお店の外に並べてある鉢植えの中から、
細長い葉で金魚の尻尾のような形をした
小ぶりの花を持ち上げた。
あなた

風通しのいい日向で育ててね?
鉢植えだから、用土が乾いたら
たっぷり水やりをすること

常葉 紫乃
常葉 紫乃
わかってる。
育て方知らないで買うほど、
バカじゃないし
あなた

うっ

あなた

(ひと言多いんだよなあ、
常葉くんって)

あなた

念のため、念のため付け加えると。
湿気は嫌いな子なので、
やりすぎは注意だからね?

常葉 紫乃
常葉 紫乃
はいはい。
いいから、手を動かせば?
ちゃっちゃと梱包しちゃってよ
あなた

(この生意気ツンデレめ!)

とは、さすがにお客様なので言えず……。

私は店内に入り、
カウンターで梱包する。

店長は奥で花の仕入れの仕事でもしているのか、
売り場に姿はなかった。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
その花言葉、知ってる?
あなた

え? リナリアの?

常葉 紫乃
常葉 紫乃
この話の流れで、
それ以外になにがあるの?
あなた

むっ……『この恋に気づいて』、
だよね?

あなた

(ほんと、口が悪い!)

ふくれっ面で手を動かしていると、
ふいに手元が陰る。

顔を上げた瞬間、
常葉くんの顔が間近にあった。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
そ、この恋に気づいて
あなた

……!