顔を突き合わせて話していると、
遠くから声が飛んでくる。
ゲートの向こうで亜子と真翔くんが
私たちを待っていた。
私たちは亜子のところへ行き、
さっそくテーマパークを回ったのだが……。
ジェットコースターに、
タワー型の絶叫マシン。
50m上空で高速に回る
空中ブランコみたいな乗り物。
思い出すだけで吐き気がする。
紫乃くんも絶叫マシンが苦手なのか、
渋い顔をしていた。
ふたりでぐったりしていると、
真翔くんが近づいてくる。
真翔くんが私の肩を抱いてきた。
その胸を押し退けたとき、
亜子が眉を寄せて私たちを見ているのに気づく。
そう思って後ずさったとき、
亜子がなぜか紫乃くんに駆け寄った。
亜子が紫乃くんの腕に抱き着く。
頭が真っ白になって動けずにいる間にも、
真翔くんが私を強引に引っ張っていく。
やんわりと亜子の腕を振りほどいた紫乃くんは、
私のところへ走ってきた。
敬語だったけれど、
紫乃くんの目は強く真翔くんを射抜いていた。
ぱっと手を放す真翔くんを、
紫乃くんは冷ややかに一瞥し、
代わりに私を引き寄せた。
聞き返すと、
紫乃くんのため息が耳にかかる。
紫乃くんはそう言って、
私を強く抱きしめた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!