第11話

11話 彼女を守るのは、俺の特権
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2020/08/15 04:00
あなた

(真翔くんが私を狙ってる?
亜子がいるのに、ありえないって……)

常葉 紫乃
常葉 紫乃
いい? 覚えておきなよ?
顔を突き合わせて話していると、
遠くから声が飛んでくる。
亜子
亜子
ねーえー! 
ふたりともー!
早く来なよー!
あなた

(あ……)

ゲートの向こうで亜子と真翔くんが
私たちを待っていた。
あなた

(ふたりのこと、忘れてた!)

常葉 紫乃
常葉 紫乃
俺たちも早く行くよ
あなた

え、でもチケット
まだ買ってないよね?

常葉 紫乃
常葉 紫乃
なに言ってんの?
あんたと話してる間に、
とっくに買ったから
あなた

気づかなかった……

常葉 紫乃
常葉 紫乃
俺はあなたと違って、
同時にいろいろできるから
あなた

(ひと言多い!)

私たちは亜子のところへ行き、
さっそくテーマパークを回ったのだが……。
あなた

ううっ、気持ち悪い

ジェットコースターに、
タワー型の絶叫マシン。

50m上空で高速に回る
空中ブランコみたいな乗り物。

思い出すだけで吐き気がする。
あなた

(まさか、ダブルデートで
絶叫アトラクション制覇する
つもり……?)

常葉 紫乃
常葉 紫乃
あの人たち、バカなの?
紫乃くんも絶叫マシンが苦手なのか、
渋い顔をしていた。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
なんでわざわざ気分悪くなるような
乗り物ばかり選ぶかな
あなた

ちょっと休みたいかも……

ふたりでぐったりしていると、
真翔くんが近づいてくる。
真翔
真翔
あなたちゃん、大丈夫?
少し休もっか
あなた

あ、ごめんね。
そうさせてもらえると
助かります……

真翔
真翔
あそこにカフェがあるから。
俺に寄りかかって
真翔くんが私の肩を抱いてきた。
あなた

えっ、ちょっと……。
あの、大丈夫だから!

その胸を押し退けたとき、
亜子が眉を寄せて私たちを見ているのに気づく。
あなた

(あっ……亜子が気にしてる!
早く離れないと!)

そう思って後ずさったとき、
亜子がなぜか紫乃くんに駆け寄った。
亜子
亜子
絶叫系、苦手なの??
常葉 紫乃
常葉 紫乃
苦手なわけじゃないです。
気乗りしないだけで……
亜子
亜子
強がっちゃってー、可愛いっ
亜子が紫乃くんの腕に抱き着く。
あなた

(えっ、亜子、なんで……)

頭が真っ白になって動けずにいる間にも、
真翔くんが私を強引に引っ張っていく。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
すみませんけど、
俺、彼女のことが心配なんで
やんわりと亜子の腕を振りほどいた紫乃くんは、
私のところへ走ってきた。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
あとは俺が運ぶから、
その手、放してもらっていいですか
敬語だったけれど、
紫乃くんの目は強く真翔くんを射抜いていた。
真翔
真翔
それは残念
ぱっと手を放す真翔くんを、
紫乃くんは冷ややかに一瞥し、
代わりに私を引き寄せた。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
ほんと、手がかかるよね、
あんたって
あなた

ご、ごめんなさい

常葉 紫乃
常葉 紫乃
仕方ないから許す。
それが俺の特権でもあるんだし
あなた

特権?

聞き返すと、
紫乃くんのため息が耳にかかる。
常葉 紫乃
常葉 紫乃
彼女を守るのは、
俺の特権って意味。
すぐに察しなよ、バカ
紫乃くんはそう言って、
私を強く抱きしめた。

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