第2話

「夜の帳を裂く雷鳴のように・ おまけ①」
15
2021/01/29 12:49
※ 公開中の二次創作の小説「夜の帳を裂く雷鳴のように」の第25話 「浦島太郎」の続きの話です。





鳥のさえずりが聞こえる

花の甘い香り

風が吹いている

太陽があたたかい



母「葵ー!落ちちゃうよー!」
『あぁ、ほんとだ』
外の世界に夢中で、縁側から身を乗り出しすぎて落ちるところだった
春ってなんて素敵な季節なんだろう
色々な匂いや、音、、
私が普通の女の子だったら、、、
どんなに良かっただろう

お花見も楽しく出来たはず





あ、外から子供の声

多分同い年くらいの




「海行こう!!」

「えー、、まだ冷たいよぉ」

「大丈夫!足入れるだけ!」

「う~ん、ならいいよ」






『いいなぁ』
『お母さん、私も行きたい』
母「そうねぇ、、」
母「お父さんのお仕事がない日に3人で行こうか、、、あ!そうだ、今日またお父さんがお花買ってきてくれるって」
『あ、わかった』



また、買ってきてくれるんだね
でもね、
嬉しいけど
苦しいの
だって、、、
いい香りがして、綺麗なものでも
見えなきゃ意味がないでしょう?










そう、私は目が見えない

生まれつき弱視で今はもう見えない

だから色がわからない
赤色って何?
青空ってどんなの?
夕焼けってどれほど眩しいの?





こんな状態でずっと生きていかなきゃいけないの?
みんなと同じことは出来ないの?












時は流れ___夏




海、、、3人で行った海
久しぶりに嗅いだ匂い
程よく冷たかった海水


今でも覚えてる







海って濃い青色なんだって

どこまでも続いているんだって

想像出来ないなぁ、、、
泳ぐことも出来るんだつて
私には、多分一生出来ないこと
嫌だ、、嫌だ、、、












私はあの日から海が忘れられない
あの匂いと、
波の押し寄せて引いていく音、
砂浜の上で波を待つと
波が引く時に自分も吸い込まれる感覚





もう1度行きたい

泳ぎたい

1人で行ってみたい

自由に外を歩きたい




そんなとこばかり考えてしまう







『おやすみなさい』
母、父「おやすみなさい」
私は心臓の音と表情、動きから悟られないようにお母さんとお父さんにおやすみをする
何を悟られないようにするのかって?





それはね、今夜、家を抜け出して、

海へ行くこと

1人でね





私はこっそり家を抜け出して、

近所の海へ向かう





『サクッ サクッ』
砂浜に足を踏み入れると心地の良い音がする
ここに来るまでだいぶかかってしまったし、

何回か転んでしまった

それでも何とか到着した

ほら、もう波の音がすぐそこに



心臓がより一層速く鼓動する




音の方へゆっくりゆっくり歩いていく
『少しだけ、、』
そして、恐る恐る足を水に入れる





あぁ、冷たい



今、海は綺麗なんだろうな

月明かりに照らされて

見てみたい

見てみたいなぁ






気がつけば、目から大粒の涙が溢れ出して

止まらなかった

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