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第1話

ロケットサイダー
50
2021/07/21 07:39
1945年、8月9日。
長崎の夏の空は、ラムネの瓶みたいな水色だった。
いつものように蝉の鳴き声が聞こえる。
そんなごく普通な夏のこと。
「ドカンッ!」という大きな爆発音と共に熱風が僕の頬を叩いた。
僕
うっ…熱…
??
大丈夫?
後ろから誰かの声がする。
振り向くと、幼馴染のあの子だった。
幼馴染
幼馴染
とにかく逃げよう。
僕たちは死の町の中を彷徨さまよった。
拝啓 天国のお母さん。
今、人類は希望を失っています。
大抵のアメリカ軍たちは最低で、瓦礫や廃材置き場に住む毎日です。
幼馴染
幼馴染
とにかく衛星都市都会に行こう。
君は言った。
幼馴染
幼馴染
現実回避しに。
あまりの白い光に世界が透けて見える。
耳の遠くで鳴るサイレンが脳内で繰り返される。
光の中に包まれたまま、僕たちは空を飛んだ。
上から見る地面はあまりにも何にもなくて。
幼馴染
幼馴染
何にもないね
なんて、くだらなくて、笑い合う。
青紫色で、まるでラムネのビー玉みたいな君の目。
さらさらした黒髪。
凛とした声。
僕は気づいた。


彼女に恋をしてしまっていたことに。
幼馴染
幼馴染
これからも、空を旅しよう。
僕
うん__
この旅の果ては分かってる。
でも今は知らないふりをしよう。
地上にパラパラと灰色の雪が降っている。
幼馴染
幼馴染
不思議。8月の雪だね。
そんな景色は、鮮やかなビードロを覗いたように見えた。
いつのまにか、君も、僕の目からも、涙が溢れてていた。
わずかに涙を通して、崩壊する都市が見えた。
それが僕の最後の夏だった。
幼馴染
幼馴染
見て!あそこに月がある!
僕
じゃあ、一旦月で休む?
僕
ここに銀貨が落ちてる。
幼馴染
幼馴染
じゃあ、それで飲み物を買おう。
傷つけあうのなんて馬鹿らしいよ。
もう、あの世界には戻らない。
僕らは何度も星を巡る。
僕
何がいい?











幼馴染
幼馴染
サイダーがいいな

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