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第2話

季節外れ(NOチャット)
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2021/08/09 02:08
僕には幼い頃から幽霊が見える。
木に首を吊ったサラリーマン、こちらをじっと見つめている子供。
なんだかんだで心霊現象に慣れてしまって、全然怖くなくなっていった。
ひいおばあちゃんも霊感があるらしく、僕はその血を引き継いで見えるようになった。
だが、僕が11歳になった頃。
その頃好きだった幼馴染の子が交通事故で亡くなった。
_酷い怪我で、肩の骨が見えていた。
そんな僕を置いていくように時は過ぎ高校1年生になった僕は、毎年開催される地域の夏祭りに出かけることにした。
残念ながら「幽霊が見える人とは関わりたくない」と言われ、彼女ができたことはない。
ただ、蒸し暑い中で食べるたこ焼きが食べたくて毎年来ている。
これが生きがいの一つでもあった。
「おじさん、たこ焼き一つ!」
朱色の 提灯ちょうちんに照らされたたこ焼きのおじさんにそう言い、毎年変わらない、美味しいたこ焼きを頬張った。
「うーん、美味しい。」
外はパリッとしていて鰹節かつおぶしのいい香りが口の中に広がり、香りすら味を感じる。
中身は天かすがふわふわでとろっとしている。
頬がとろけそうだ。
たこ焼きの美味しさに浸っていると、ある一人の女の子がいた。
年齢は同じくらいで、凛とした黒い目が綺麗。また綺麗な黒髪をしていて、浴衣を着ていたりと和風な印象だ。
一人でいるので声をかけようと思い、肩を叩いたが、手がすり抜ける。
(この子は、幽霊かもしれない。)
そう感じてその場を離れようとすると、その子の手が僕の手を包んだ。
「冷たっ!」
そう。その子の手は雪のように白く、そして冷たかった。
その感覚に少し気味の悪さを覚える。
季節外れに冷え切ったその子の手に、僕の顔から汗が溢れ落ちた。
視線を女の子の方へ落とすと、女の子は涙ぐんだ目で笑っていた。
「やっと会えたね」
見覚えのある顔だった。

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