第35話

思い出せない
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2023/08/02 11:00


あなたside



誰もいない、静かな街。


雲ひとつない、青い空の下で、
どこまでも広がる青い海。

波の音だけが聞こえてくる。



あなた「…」



水面に反射する太陽の光が
キレイで、ぼーっと眺めていた。


そんな時、



「探したんだけど」



黒い制服を着た男の子。
多分、中学生くらいかな?

少し息を切らして、走ってきたらしい。


石の上に座る私の隣に、
そっと腰を下ろすその男の子。



「兄貴、急にいなくなるから心配してたぞ」



誰だろう…

わからないけど、
なんとなく、懐かしく感じて、


でも、わからない。知らない。
記憶にはない男の子。



「帰んねぇの?」



顔がよく見えない。

これは、誰の記憶かな、
私のじゃないや。


優しくて温かい。そんな感じ。



「なんだよ。んな顔して」



見覚えなんてない。
記憶にもない。知らない人。

声を聞いても、誰かわかんなくて、


だけど、

…この感じ、
知ってるような気がする。



「…あんま無理すんなよ」



私の頭をくしゃっと撫でて、
立ち上がった男の子。


…なんでかな、

知っているはずなのに、
思い出せない。

どんな人だったっけ、



「帰んぞ、あなた」



私の名前を呼んで、
優しく手を差し伸べてくれた人。

海を眺めてぼーっとする私に、
そう優しく言って、

ずっとそばにいてくれた人。


どんなに記憶を辿っても、
どれだけ考えてもわからない。


どうしても思い出せなくて、


絶対、忘れちゃいけない。
大切な人のはずなのに、


…なんで、

思い出せないのかな、



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