第11話

vol.9 アルバイト
1,234
2022/01/18 23:41
次の日になり、体力育成の授業を行う。
唯一の女子ということもあり、着替えるなら空き教室で着替えろとクルーウェルセンセーに言われ、空き教室で着替えた。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
昨日どうだったよ?
ドレスデザインのモデル
月峯 奏
月峯 奏
途中からクルーウェルセンセーも来て着せ替え人形にされた
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
うーわー。あの美意識高い二人が揃っちゃったか
グリム
グリム
でも、良い感じだったんだゾ
デュース・スペード
デュース・スペード
良い感じとは……?
グリム
グリム
カナデの大変身ショー見てたけど、貴族みてーだし、黙ってるとコイツ白いから等身大の人形みてーだったんだゾ
デュース・スペード
デュース・スペード
それ、良い感じなのか?よく分からないが
授業の最初にはランニングを行い、センセーに気付かれないようだべりながら走る。
私は喰種なので人間よりかは体力はある。なので特に苦では無いが、怪しまれない程度に加減はする。
月峯 奏
月峯 奏
(でも、動けば動く程エネルギーを消費する訳だから……クソ。暫く“肉”を口にしてないせいか腹がヤバいな)
グリム
グリム
おい、カナデ大丈夫か?何だか顔色が悪いんだゾ。オマエ、朝飯ちゃんと食ってねぇから
月峯 奏
月峯 奏
いや、そういう問題じゃねぇけど
グリム
グリム
じゃあ他になんかあんのか?
月峯 奏
月峯 奏
……ただの貧血だ。気にすんな
体力育成の授業は何とか終え、その次の授業もまたその次の授業も、読めない文字につまづきながらもある程度こなす。ただ、昼食の時間は離れたくてもエース達から離れられない。無意識なのか知らないが、私のあとを追い掛けたりして、一緒に行動することがほとんどなのだ。まぁ、この世界やこの学校について右も左も分からないので、助かる面はあるが。
月峯 奏
月峯 奏
(あ、今日のデザートにケーキがある)
食堂に行き、長い列に並びながら少量ずつ料理を皿に盛る。喰種の私からすれば“甘い”が何かわからない分、人間が美味しそうに食べるケーキは気になったりする。これは確か、あんていくで知り合った霧嶋董香も同じだったはずだ。
月峯 奏
月峯 奏
(ケーキって見た目は……綺麗なんだよな。あのクソまずい味の割に不思議と)
正直あんまり食う気になれないが、渋々ケーキを皿に乗せ、エース達の居る席に戻る。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
お、カナデもラズベリーケーキとったんだな。これ、前も食堂に出てたんだけど美味いんだよなぁ
月峯 奏
月峯 奏
へぇ……?甘い物はあんまりだけど、つい取っちまった
デュース・スペード
デュース・スペード
甘い物は苦手なんだな
グリム
グリム
コイツ、自分でも言ってたけどやっぱり偏食なんだゾ。寮に居る時全然食わねぇし
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
そうなの?
月峯 奏
月峯 奏
まぁ、そうかも
人間の肉、もしくは喰種の肉しか食べられないので、食えるものがかなり限られている。でも、いつかそれ以外の食べ物を心の底から“美味しい”って言ってみたい気持ちは少なからずある。
それで、純粋に普通に“食”とやらを楽しんでみたい。……なんて、らしくもなく思う。
月峯 奏
月峯 奏
(これ、ラズベリーケーキなんだ。なら、後で食べた時に“甘酸っぱい”って言っといた方がいいか)
食べ物の感想は本当に困る。味が分からないので、周りに合わせて同じ言葉を言うしかない。
でも中には隠し味やら、見た目に合わず、変わった味がするものもあるから感想がズレてしまう時がある。
それこそ、お菓子作りで間違えて砂糖ではなく塩を使ってしまったのに“甘い”と言ってしまう……みたいな。
それでも、私達が感じる砂糖の味と塩の味は違いがあるので、食べた時に“これクッキーだけど、砂糖を使った不味い味じゃなくて塩を使った料理と同じ不味い味がする”と気付くこともある。
グリム
グリム
そういやぁ、お金がそろそろ無くなりそうだしバイトした方が良いんじゃねぇか?
月峯 奏
月峯 奏
バイト?するにしたって何処で?
グリム
グリム
オクタヴィネルにあるモストロ・ラウンジだ!
話を聞くと、学校内にカフェを経営してる生徒が居るらしく、前に居た監督生はそのカフェで時折アルバイトをしていたらしい。
月峯 奏
月峯 奏
(アルバイトねぇ。昔を思い出す)
昔はあんていくという喫茶店でアルバイトをしており、私はカウンターの方でコーヒー作りや、サンドイッチ作りをしていた。笑うのが苦手だったからだ。
グリム
グリム
ただ、オクタヴィネルのリーチ兄弟とアズールは厄介な奴らなんだゾ
月峯 奏
月峯 奏
(リーチ兄弟って、昨日耳にしたな)
月峯 奏
月峯 奏
何がどう厄介なんだ?
聞いてみると、グリムだけでなく、エースとデュースまでもが顔を顰めながら過去に起きた出来事を話す。話を聞く限り確かに面倒そうな輩ではある。
月峯 奏
月峯 奏
んで、そいつらのいるカフェで働けと?
デュース・スペード
デュース・スペード
何もしない限り、害は無いはずだ。多分
月峯 奏
月峯 奏
不安要素でしかないんだが
でも、私からすれば割と平気だったりする。何せ、似たような輩……それ以上にヤバいやつらは喰種の中にわんさかいるからだ。今はいないがヤモリとか、な。
月峯 奏
月峯 奏
なら、今日下見してみるか
あまり気は進まなかったが、ユウが残した僅かな現金を持って、放課後モストロ・ラウンジへと下見に行くことにした。

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