─────────植物園にて。
授業をサボって植物園で寝ていると、不穏な気配を察知して目を覚ます。
目に映ったのは、俺を見下ろす一人の小娘。
俺が声を掛けると、ガキはハッとした顔をし、そそくさと出入口の方へ逃げてしまう。
二度寝しようと目を瞑ると「うわっ」と、ラギーの声が聞こえた。
ラギーはカナデと話をし、何故植物園に居るのか尋ねる。
カナデの言葉はよく分からなかったが、どうやらラギーには通じたらしく、「“校庭で授業中だから終わるまでフラついていた”……って言いたいんスね」と通訳じみたことをしていた。
付け加えるように「頭隠して尻隠さずッスね。シシシッ」と言って笑うので、「調子のんな」と返しておいた。
二人して何してんだか……と、呆れながらも俺は目を瞑るが、先程感じ取った気配について疑問が残る。
まさか、あのガキに?だとすれば何故?
いや、気の所為か?
などなど、自分なりに考えてみるが、検討がつかない。カナデがどうしてガキの姿になってんのかは知らねーが、興味もないからどうでもいい。
カナデが頷いたのか「そうだったんスね」とラギーが言い、俺は「お前等、行くなら早く行け」と話しを遮った。
それだけ言うと、ラギーはカナデを連れて植物園から出て行った。結局、不穏な気配が何だったのかは分からない。
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今更ですが、ラギー君の監督生に対する“くん付け”は、女性を君付けで呼ぶ敬称のようなニュアンスです。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!