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第37話

vol.35 不穏な気配 レオナ視点
854
2022/07/12 06:16
─────────植物園にて。
授業をサボって植物園で寝ていると、不穏な気配を察知して目を覚ます。
目に映ったのは、俺を見下ろす一人の小娘。
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(何で女のガキが……)
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
オイ、誰だお前
俺が声を掛けると、ガキはハッとした顔をし、そそくさと出入口の方へ逃げてしまう。
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(一体何なんだ)
二度寝しようと目を瞑ると「うわっ」と、ラギーの声が聞こえた。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
あれ、カナデくんじゃないッスか。
デュースくん達と一緒じゃないの?
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(カナデ……?もしかして、あのガキが監督生なのか?)
ラギーはカナデと話をし、何故植物園に居るのか尋ねる。
カナデの言葉はよく分からなかったが、どうやらラギーには通じたらしく、「“校庭で授業中だから終わるまでフラついていた”……って言いたいんスね」と通訳じみたことをしていた。
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(何でカナデがガキに?しかも、ガキだからってあそこまで滅茶苦茶な言葉使うか?)
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
さーて。カナデくんはともかく、レオナさんそこにいるんでしょ〜?授業出てくださいよー。また留年しますよー
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
うるせぇ。つか、お前も授業中だろ。
どうしてここに居る
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
ちょっくら授業で裏庭の方へ皆で行ってたんスよ。んで、植物園にちまっこい子が居たから見に来ただけッス。案の定カナデくんでしたけど。レオナさんは、尻尾が見えたんで分かっただけッス
付け加えるように「頭隠して尻隠さずッスね。シシシッ」と言って笑うので、「調子のんな」と返しておいた。
カナデ(幼少期〜小学低学年)
カナデ(幼少期〜小学低学年)
おいーさんたち、“ひと”じゃないの?
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
獣人族って言う種族だから、ただの人では無いッスかね
カナデ(幼少期〜小学低学年)
カナデ(幼少期〜小学低学年)
……
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
どうかしたんスか?ジーッと見て。あ、言っておくけど尻尾や耳は触らせないッスよ
二人して何してんだか……と、呆れながらも俺は目を瞑るが、先程感じ取った気配について疑問が残る。
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(なんに対して“不穏”な気配を感じ取ったんだ。俺は)
まさか、あのガキに?だとすれば何故?
いや、気の所為か?
などなど、自分なりに考えてみるが、検討がつかない。カナデがどうしてガキの姿になってんのかは知らねーが、興味もないからどうでもいい。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
じゃあレオナさん。俺達は出ていくッスから、ちゃんと授業出てくださいねー。さ、カナデくん行くッスよ。この学校広いからカナデくんだけじゃあ迷子になるかも知んないし
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
世話好きめ
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
したくてやってるんじゃないッス。子供のカナデくんは言葉が上手く喋れないみたいだし、つい気になっちゃうんスよ。なーんかスラム街での仲良かった子供達思い出して
レオナ・キングスカラー
レオナ・キングスカラー
(そういやぁアイツも学校来た時は生活の知識以外ボロくそだったから、俺が色々と教えてやったんだっけか)
カナデ(幼少期〜小学低学年)
カナデ(幼少期〜小学低学年)
すらむ?
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
お金が無い人達が沢山いる場所ッス。その日のご飯を探すだけで一苦労なんだから。って、子供カナデくんに言っても分かんねーかな?
カナデ(幼少期〜小学低学年)
カナデ(幼少期〜小学低学年)
ごはん、みつける。たいへん。
……わかう
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
そうそう、大変。……あれ?“分かる”ってのは、どういうことッスか?まさか、カナデくんのお家も貧しかったとか?
カナデが頷いたのか「そうだったんスね」とラギーが言い、俺は「お前等、行くなら早く行け」と話しを遮った。
ラギー・ブッチ
ラギー・ブッチ
はいはい。んじゃあまた後で寮で会いましょ
それだけ言うと、ラギーはカナデを連れて植物園から出て行った。結局、不穏な気配が何だったのかは分からない。
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今更ですが、ラギー君の監督生に対する“くん付け”は、女性を君付けで呼ぶ敬称のようなニュアンスです。

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