第7話

vol.5 初めての授業
1,379
2021/12/06 18:55
急展開でナイトレイブンカレッジに通うことになったが、本当に良かったのだろうか。
そもそも自分は人間と馴れ合うかよスタンスでやって来た喰種なので、嫌々妥協した部分はある。
月峯 奏
月峯 奏
男子校に女子が通うなんて、漫画やアニメでしか聞いたことないぞ。
しかも来た当日に
グリム
グリム
なら体験出来て良かったな!
月峯 奏
月峯 奏
よくねぇよ
1-Aに恐る恐る向かうと、先程外で会った二人に再会する。周りの男子生徒がジロジロと見ている中、二人は此方を見て目を見開く。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
さっきの……その制服どうしたんだ?
エースに聞かれてグリムが事情を話すと、案の定二人は「え!?通うの!?」と驚いた声を出す。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
マジかよ!男子校なのによく許したな学園長
デュース・スペード
デュース・スペード
ぼ、僕はデュース・スペード。え、えぇと……な、名前、は……伺ってもよろしいですか……?
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
ぶはっ!お前、なんでそんなかしこまってんだよ。言葉も何かおかしいし、あはは!
デュース・スペード
デュース・スペード
う、うるさい……!女子と話すのは慣れてないんだ……
月峯 奏
月峯 奏
……名前は月峯 奏
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
へー。カナデか!綺麗な響の名前だな。
さっきも名乗ったけど、俺はエース・トラッポラ。改めてよろしく!
月峯 奏
月峯 奏
あ、あぁ。よろしく
学生として人間と話すなんて初めてなので、らしくもなく少し緊張していたりする。よろしくとは言っても、仲良しこよしするつもりはない。ある程度の距離は保つ。いつ、どこで自分の正体がバレるのか分からないのだから、警戒しておく必要はあるだろう。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
カナデは、なんで眼帯してるんだ?って……聞いても良かったか?
グリム
グリム
それ、オレ様も聞いたんだゾ
デュース・スペード
デュース・スペード
も、もしや、怪我でもしてる……んですか?
グリム
グリム
オレ様も言ったんだゾ
月峯 奏
月峯 奏
強いて言うなら目の色を隠す為
グリム
グリム
オレ様の時は教えてくれなかったのに!?
手っ取り早く説明する為、眼帯をとって実際に目の色が違うのを見せてみる。
エース・トラッポラ
エース・トラッポラ
左目は黄色だけど右目は水色なんだな。普通に悪くないと思うけど、これ以上は聞かないでおく
その方が有難い。
二人と話をしていると、チャイムが鳴る。
一時間目の授業は学園長と話をしたり、着替えたりしていた間に終わっていたので、次は二時間目の授業になる。魔法史の授業らしいが、学園長から既に事情を聞いているようで、必要な物は隣にいるデュースに貸してもらうことになった。
自分の存在が迷惑では無いか。此処に居ていいのか、と暫くは悩みそうだ。
月峯 奏
月峯 奏
……教科書、ちょっと見せてもらっても良い?
デュース・スペード
デュース・スペード
あ、あぁ……ど、どうぞ
月峯 奏
月峯 奏
(こいつマジで異性と話すのも慣れてないんだな。目すら合わせないぞ)
呆れながらも、見せてもらっている身なので大人しく隣で教科書を見るが全く分からん。
今更ではあるが、学校に行った経験もなければ、文字すら読めない喰種や書けない喰種だって私以外に沢山居る。歴史を勉強する以前の問題だ。全く出来ない訳では無いが、自分もどちらかといえばそちらの部類。
分からない言葉があれば調べる分、白スーツメンバーのナキよりかはまだマシだが。
月峯 奏
月峯 奏
(な、何これ。何て読むんだ?クソっ……。ひらがなやカタカナは覚えてるけど、漢字とかそれ以外は分からねぇのが多すぎる……。だから行きたくなかったんだよ。理由はそれだけじゃないけど)
※実際は英語で書かれているが、カナデには日本語に見え、エース達には日本語が英語に見える。
デュース・スペード
デュース・スペード
……?だ、大丈夫、か?
月峯 奏
月峯 奏
あのさ、ここ。ちょっと音読してみて
私が試しに言うと、デュースは首を傾げながらも小声で音読してくれる。読み方は分かっても今度は言葉の意味が分からない。
月峯 奏
月峯 奏
(めんどくせぇ……)
今まで人間社会に溶け込むよりも、喰種として裏の世界にいた時間が長いせいか、勝手が分からない。喰種のいないこの世界で、もし自分の正体がバレてしまったら……果たして自分はどうなるのか。CCGは居ないとはいえ、人を食糧として喰らう時点で“化物モンスター”の一種と認識されて駆逐されるのだろうか。いや、きっとそうだろう。考えるまでもない。
月峯 奏
月峯 奏
(喰種だと知れば、この世界の奴らだってきっと……)
虚無感が胸の中に広がり、先生の話すら聞こえずにボーッとしていると、いつの間にか授業が終わった。

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