急展開でナイトレイブンカレッジに通うことになったが、本当に良かったのだろうか。
そもそも自分は人間と馴れ合うかよスタンスでやって来た喰種なので、嫌々妥協した部分はある。
1-Aに恐る恐る向かうと、先程外で会った二人に再会する。周りの男子生徒がジロジロと見ている中、二人は此方を見て目を見開く。
エースに聞かれてグリムが事情を話すと、案の定二人は「え!?通うの!?」と驚いた声を出す。
学生として人間と話すなんて初めてなので、らしくもなく少し緊張していたりする。よろしくとは言っても、仲良しこよしするつもりはない。ある程度の距離は保つ。いつ、どこで自分の正体がバレるのか分からないのだから、警戒しておく必要はあるだろう。
手っ取り早く説明する為、眼帯をとって実際に目の色が違うのを見せてみる。
その方が有難い。
二人と話をしていると、チャイムが鳴る。
一時間目の授業は学園長と話をしたり、着替えたりしていた間に終わっていたので、次は二時間目の授業になる。魔法史の授業らしいが、学園長から既に事情を聞いているようで、必要な物は隣にいるデュースに貸してもらうことになった。
自分の存在が迷惑では無いか。此処に居ていいのか、と暫くは悩みそうだ。
呆れながらも、見せてもらっている身なので大人しく隣で教科書を見るが全く分からん。
今更ではあるが、学校に行った経験もなければ、文字すら読めない喰種や書けない喰種だって私以外に沢山居る。歴史を勉強する以前の問題だ。全く出来ない訳では無いが、自分もどちらかといえばそちらの部類。
分からない言葉があれば調べる分、白スーツメンバーのナキよりかはまだマシだが。
私が試しに言うと、デュースは首を傾げながらも小声で音読してくれる。読み方は分かっても今度は言葉の意味が分からない。
今まで人間社会に溶け込むよりも、喰種として裏の世界にいた時間が長いせいか、勝手が分からない。喰種のいないこの世界で、もし自分の正体がバレてしまったら……果たして自分はどうなるのか。CCGは居ないとはいえ、人を食糧として喰らう時点で“化物”の一種と認識されて駆逐されるのだろうか。いや、きっとそうだろう。考えるまでもない。
虚無感が胸の中に広がり、先生の話すら聞こえずにボーッとしていると、いつの間にか授業が終わった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。