中也さんと会話が終わった後、芥川の見舞い
に行く用意をしていた。
支度が終わり車で10分程走った後に着いた。
「芥川〜来たよ」
「帰れ」
狗の様に唸りながら言った。
「そんな事言わないで、ほら芥川の好きな
果物持ってきたから。はい、どうぞ」
「・・・貴様」
「ん?」
「僕が好きなものを知っているだろう?」
「うん、知ってるね」
「並ば訪ねよう。何故蜜柑を持ってきた」
「あ、間違えた!」
「嘘をつくな。」
そう言って私を睨みつける。
「芥川〜怖いよ〜?」
「戯けっ!誰のせいで・・・!!」
傷口が痛むのか最後まで言わずに傷口に
手を当てて呻き声を出した。
「怪我人は大人しくしとかないと。」
「貴様は・・・本当にあの方に似て・・・いる」
「!?」
芥川は確かに言った。
意識を朦朧とさせながら
苦しそうにしながら、確かに。
「ねぇ、その人って誰なの?」
「僕の師匠だ。・・・其の人に・・・認められる、のなら・・・この身が幾ら・・・砕けようが・・・・・惜しく・・・な・・・い」
其れを言った後、彼は寝息を立て始めた。
中也さんも芥川も余程、その人の事を
信頼して親しみを持っていたのか。
そう思うと胸が先程のように痛んだ。
そして思った。
彼等を裏切った人物に復讐してやる、と。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!