ジョングクside
あなたたちがショッピングモールに行った日のこと____
その日、俺は朝からバイトに行った
本来、日曜は午前中で終わるはずだったが、店長に頼んで許可を得た俺は午後も働かせてもらった
気が付けば、もう午後5時
この店の学生のバイトは午後5時までと決まっている
そのことは父さんも母さんもアイツも承知だ
その後も3週間くらい俺は時間ギリギリまでバイトをした
俺が帰ってくるといつもほっとした顔になる母さんには本当に申し訳ない気がするが
俺がこんなにも頑張るのには理由がある__
それは、2人が新婚旅行に行っていた時のこと
アイツとコンビニに飲み物を買いに行って、俺がレジを済ませると
アイツは隣のアクセサリーショップの商品を覗いていた
バレないように後ろから覗くと
おそらくコイツが見ているのは星形のネックレス的なやつだと分かった
するとびっくりして後ろを振り向いてきた
これは、嘘ついてるときの顔
昔からそうだった
欲しい物があってもだいたい我慢してる
きっとこんな高いもの、親に言っても買ってもらえないだろうと思った俺は
今月バイトを頑張ってこのために金を貯めようと思った
バイト代の振り分けは
もうすぐジュンの誕生日なので
以前欲しいと言っていたダンスシューズを買おうと思っていたのと
星形のネックレス?まぁとりあえずそれ
あとは
俺の貯金と余ったバイト代を足して母さんが欲しいと言っていた洗濯機を買ってあげたいと思った
それから3週間ほど立って
ついに目標額に達したお金がもらえた
そう言って店長はボーナス金をくれた
俺はもう一度お辞儀をしてから全力で走って家に戻った
ガチャ
俺がスリッパに履き替えたその時
俺はびっくりして目を疑った
アイツが怒っているのを、初めて見たからだ
は?
訳が分からない
アイツは本気だった
父さんも母さんも「あなた、落ち着いて」
とか言って止めに入るけど、アイツは本当に怒っていた
はぁ…
俺はそんなチャラい男だと思われてたってことかよ
もう
どうにでもなれ
俺がそう言うと、アイツは怒るのをピタリとやめた
はぁ…
それから俺は自分の部屋に荷物を置いて夕飯を食べに1階に下りた
アイツは夕飯に来なかった
おそらく自分の部屋にいるのだろう
ご飯を食べ終わった後、俺は母さんにお金を渡した
母さんは驚いて目を丸くしていたが、とても嬉しそうでもあった
自分の部屋に戻ろうとしたら、階段の所にアイツが呆然と立っていた
まじかよ…
全部聞かれてたってことか?
はっず
早くこの場から立ち去りたくて、アイツの目の前を通り過ぎようとした
すると、
俺はアイツの方を振り向いた
そして俺に謝ってきた
顔を上げたアイツは自分の部屋のドアノブに手をかけようとした
そう言って俺は一番渡したかった物を渡した
俺はこれを買うとき、周りの女性客の視線が痛々しくて恥ずかしくてたまらなかったのに
遊んでたとか勘違いされて
ホントに辛かったけどな笑
こんなに優しい兄貴はいないと思う
アイツはびっくりしてしばらく固まっていた
それからアイツは
とびきりの笑顔を俺に向けてから、こう言った
アイツが自分の部屋に入った後、俺はしばらく頭を抱えながら廊下にしゃがみ込んでいた
コイツ……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!