その日も、また次の日もグクの帰りは遅かった
私は最近グクの様子がおかしいことを2人に相談してみた
遊んでる???
グクはゲーム好きなのでありえなくもない
と、そこにフェジちゃんがやってきた
するとフェジちゃんは少し考えてからこう言った
えっ
フェジちゃんは一瞬私と目を合わせてからニヤリとして足早に去って行った
今までグクがずっと遊んでたとか
信じなくないけどな…
帰りのHRが終わるとグクはいつものようにさっと教室を去って行った
今日はお母さんがハンバーグ作るって言ってたな~
なーんて考えながら2人と下校して家に着いた
お母さんは楽しそうにキッチンで野菜を切っていた
私は自分の部屋に行き宿題を終わらせた頃には時計の針はもう5時半を回っていた
お父さんももう帰ってきており、グクはまだ帰ってきていない
全くもう…
1階へ下りるとお父さんとお母さんが心配そうに話していた
こんなに家族に迷惑かけといて、まだゲーセンにいるのだろうか
ガチャ
いつものように吞気に帰ってきた兄貴に私は今までの怒りが爆発した
グクはびっくりした顔でこちらを見ている
お父さんとお母さんが止めに入るけど私の怒りは収まらない
あぁ……、ムカつく!
は?
そう言うとグクはさっさと自分の部屋に向かっていった
グクのばか
私はグクとご飯を食べたくなくて2人には申し訳ないけど1人で部屋でご飯を食べていた
途中、飲み物を冷蔵庫から取るのを忘れてしまったことに気付いて、いやいや階段を下っているとグクの姿が見えて、足を止めた
グクはそう言って分厚い茶封筒を取り出した
え?
バイト代だよね、あれ絶対
ってことは
グクはゲーセンなんか行ってなくて
ちゃんとバイト頑張ってたってこと…
なのに、私……
あんなヒドいこと言っちゃった…
階段で呆然と立ち尽くしている私に気付いたグクはこっちに向かって歩いてきて、私の前を通り過ぎようとした
グクはこっちを振り向いた
私は深々と頭を下げた
顔を上げたら、グクと目が合ってしまい、私は再び自分の部屋に戻ろうとした
振り向くとグクが何かの袋をもって、手を伸ばしていた
私は袋を受け取るが中に何が入っているのか分からない
無言のグクを見て私はガサガサと袋から中身を取り出した
え、
これって
袋の中には綺麗にラッピングされた、私がずっと欲しいと思っていた星型のペンダントが入っていた
言ってないのに
胸がつーんとなるのが分かった
グクが恥ずかしそうに下を向いているのには気が付かなかったが、
その日はペンダントをにぎりしめながら眠りについた
私はグクが好きなんだということを確信しながら……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!