えっと……
私が話す言葉を失っていると
これでも私
前好きだった人としゃべってるんですよ
だって
私は中学受験をして
高校が付属の私立中学に行った
そして
そのまま高校に上がったわけだ
自分でいうのもなんだけど
小学校の勉強でさえあんなにできなかったグクが
よくこんなにレベルの高い学校の入試に受かったと思う
それからなんだかんだ言い合って
お互いの家に戻った
グクによると
私たちは明日引っ越しをするらしい
いや、
おかーさんもっと早く言ってよ笑
家に戻ると
段ボールがたくさんと
まだ使いそうなものだけが置かれていた
自分の部屋で荷物を片付けながら
頭の中はグクのことでいっぱいだった
グクが見違えるくらいイケメンになっていたこと
グクと同じクラスになったこと
グクと兄妹になること
そして
再会したグクにちょっぴりドキッとした自分がいたこと
それからご飯を食べてお風呂から出るといつの間にか時計の針は10時をさしていた
ベッドに入ったのはいいが
その日はそこから全く眠れなかった
なぜなら
彼が帰り際に見せた
久しぶりに見た笑顔が
脳内をぐるぐると回っていたからだ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!