第51話

五話 行き止まり
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2022/06/19 22:00
あなた
あなた
へくしっ!
くしゃみが出る寸前に右腕を口元に当てる。
スティング君が「風邪か?」と首を傾げるが、ローグさんが「あなたが風邪?明日は毒霧が街を覆いそうだな」と呟く。
あなた
あなた
新しい例えですね。どういう意味ですか。あと風邪じゃあありません
早朝、闇の鏡で賢者の島から無事出ることが出来たボク達は、デュースやエース達の家がある薔薇の王国にやって来た。現在、宿の一室に泊まって居る。
お金は学校で使わなかった分の余りで支払った。
あなた
あなた
情報を集めるならなるべく都心の方がいいかと思って来たけど……何処から行きましょうかね。薔薇の王国の次に行く場所も決めないと
スティング
スティング
宿行く前に、他の店でマップ買ったろ?他にどんな国があるかちょっと見てみるか。レクター、マップ開いてくれ
スティング君が言うとレクターは「はい!」と元気よく返事をし、テーブルの上に地図を広げた。
ローグ
ローグ
俺達が居る薔薇の王国は……ここか
スティング
スティング
すげぇ。名前に付くだけあって薔薇みてぇな形してんな
あなた
あなた
一輪の薔薇ですね
何処にどの国があるのかを一通り確認した後、ボク達は街へと出掛ける。
念の為スティング君達に半分ずつお金を渡し、各自情報収集の為宿の前で散らばった。
あなた
あなた
(スティング君はレクターと。ローグさんはフロッシュと。ボクは……)
あなた
あなた
ドロウは大丈夫だろうか
街を歩いて最初に気付いた事と言えば、警察がちらほらと見回りしている。
常にこうなのかは分からないが、近頃多発している魔法士拉致事件の対策の一貫かもしれない。
本屋の前に置かれた新聞を手に取り、魔法士拉致事件についての記事が載っていないかを調べてみると、熱砂の国と夕焼けの草原で人身売買目的の拉致事件が起き、どちらの犯人も捕まっている。
しかし、輝石の国と薔薇の王国で起きた拉致事件の犯人は捕まっていない。
あなた
あなた

(此処でも拉致事件が起きたのか。カリムさんやラギーさん達の故郷の話を前に聞いたことがあったけど、熱砂の国と夕焼けの草原に比べ輝石の国と薔薇の王国は云わば都会。魔法士の魔力をあちこちから感じるし、魔力を手に入れるのが連中の目的なら、うってつけ……か?茨の谷とかは魔力が高い者が多いだろうけど、大半が妖精族らしいから一筋縄ではいかないんだろうな)
ナイトレイブンカレッジの真下には地下の部屋が作られ、魔力を吸収する為の大きなラクリマが設置されてあった。
街でもそうせず拉致を続けるのは、転送魔法陣の問題もあるのだろう。
あなた
あなた
仕掛ける範囲が広大だし、何より魔法陣が見つかったら厄介だもんな
新聞を元の位置に戻し、再び街を歩き出す。
黒マント集団の目的は一体何なのだろうか。
ろくな事じゃないのは薄々察するが。
あなた
あなた
(そっちも気になるけど、グリム達は今頃どうしているのか)
黒マント集団はこの世界の警察にも追われている。何らかの拍子で魔導士がこの世界で問題を起こしていると知られれば、同じ魔導士であるボク達も疑われるかもしれない。
言葉で否定するだけなら幾らでも出来るが、今のボク達は自身が魔導士である証拠を見せるのが難しいのとは反対に、魔法が使えないからといって自分達が無害であると証明出来る訳でも無い。
あなた
あなた
(いや、正しく言えば、ボクは一昨日食べた火の魔力が極わずかに残ってるからちょっとした魔法なら使えるんですけど、いざと言う時の為に使わないようにしないといけないんですよね)
魔法士だらけの世界で魔導士と名乗るのは、自分達の存在や位置を教えてるも同様。
むしろ、魔法が使えない今だからこそ敵や警察に目を付けられることもある。
どちらに捕まっても余計手詰まりになる。
だからボクは最後まで彼等に自身の正体を明かすこと無く去ったが、理由はもう一つある。
あなた
あなた
(“実は監督生が異世界から来た魔導士で、魔法が使えて敵と戦いに行く為に云々”より、“突然魔力を持たない人間が現れて、元居た場所に帰る為、忽然と姿を消した”と言う事にした方が、多少の謎は残るにしても、シンプルな別れで良いかなって思ってしまったんですよね)
あなた
あなた
マレウスさんにも悪いことしてしまいましたね。ボクの作り話の続きを次会った時に聞かせて欲しいと言っていたのに

何となく路地裏を横目で見て歩いていたら、一瞬、黒い布を被った人が走って行くのが見えた。
あなた
あなた
今の……
まさかと思い、路地裏の方に走る。
“匂い”を追っていると、先程の人物の後ろ姿が見え、街から少し離れた木々の多い公園に出る。
何とか追いつき、顔を見てやろうとマントを掴むが、その人物は振り返る前にサァ……とマントだけ残し、消えてしまった。
あなた
あなた
消え、た……
───────そのすぐ後だった。

ドガァン!
あなた
あなた
っ……しまった。罠か!
あなた
あなた
(連中は、ボクが学校に居ないと気付いたのか?もしかしたら、スティングさん達の存在にも気付いてるのかもしれない)
ボクはすぐにその場から離れ、街中へと走って戻った。恐らく、爆音を耳にしたスティング君達もやって来るだろう。
あなた
あなた
(ボクが居た時に爆発させた方が良いはずなのに誘導した?嫌な予感しかしないな。でも、行かないわけには行かないよな……)

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