右手が痛い。
グイグイ強い力で勝利が引いてくるから。
ほんとに、どこ連れてく気なのよ!
いっつもいっつも強引だし。
窓の外には…
女の子向けの服屋さん。
でも…
ショーウィンドウに飾られたかわいいワンピース。
瑠璃色の布地に映える白のレースの刺繍。
襟にもレースがあしらわれている。
上に重ねて着る白の透けるカーディガンもおしゃれだ。
そう言った勝利は何故かその店に入っていく。
勝利は何故か我知った顔でズンズン店の奥に進んでいく。
え。なに。
どういうこと?
勝利は何やら勝手に店員としゃべって…
私の背中をぐいっと押した。
そして…
その間私は取っ替え引っ替え。
もう大忙し。
おまけに勝利ったらこだわりが強すぎて…
何回も何回も…
ていうかさ、さっきから私ドレスを何十着もきたりしてるけどさ、
なんで?
でも、ここまでしてもらって良いのだろうか。
私、父のお金もまだ返せてないのに…
後ろ…?
言われた通り後ろを向くと…
鏡には、今まで見たことのないような私がいた。
綺麗な空色のドレス。
散りばめられたスパンコールに吸い込まれそうな空色。
ほんと、楽しみ。
ありがとう。勝利。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!