第4話

蝶屋敷
1,395
2020/10/25 13:47
ずっと暗闇に過ごした私は、

ある時から成長が止まっていたのか

年齢よりも若い見た目で居たようだった。








今、私は鬼殺隊の蝶屋敷にて保護されている。

健康状態を含めて

さまざまな検査をされた。




鬼にはなっていないが、

私には普通の人間と異なる所があった。



それは、私が『飼われる』以前。

小さな雪山の梺に暮らした集落特有の遺伝だった。






胡蝶しのぶ と名乗った笑顔の彼女は、

さまざまな事実を教えてくれた。






同じ部屋に倒れていた人には傷が多く衰弱して亡くなるものが殆どだったが、私だけは、食事がなくとも命が保てていること。

傷痕は見受けられるが、深い傷がないこと。

検査の際も傷の再生が早かったこと。



そして、やはり

この丸いお腹の中には鬼の子供が居るということ。







すでに臨月に近く

出産後に育てるか殺すかが決まるらしい。







子供に優しく教えるよう

一つ一つをゆっくりと説明してくれた。





私が幼子に見える所以だ。





しのぶに紙とペンを借りて
筆談を進めた。



ーーーーー

この文字、読めますか?


私が初めてあの屋敷に連れて行かれたのは
12歳の時でした。

最初は人間の飼い主がおり、
毎日、涙や血を取られ、時に性欲の捌け口にされていました。


私の住んでいた小さな村では、
女子は、『冰女(こおりめ)』と呼ばれ

涙や血液がこぼれ落ちた時
それは結晶化し、床に落ちていきます。

この結晶を人は宝石のように金品として扱いました。

私があの屋敷に飼われたのはこれが最大の要因です。


幾年月が過ぎると…
私は飼い主の子を身籠るようになりました。

産み落とした赤子は、どこかへ売られて行き、私の元へ来たことはありません。

私はこれまでに8人の赤子を産みました。


暗闇に過ごし
曖昧ではありますが

あの屋敷で10年以上の年月を過ごしたと思います。



飼い主は、鬼に殺されました。

鬼が新しい飼い主となり、
私の他にも女子が運ばれてくるようになりました。


女子は使い捨てのように入れ替わり
飽きると食べ捨てられていきました。

鬼が飼い主になり、今の赤子は3人目となります。

過去の赤子は、産み落としても鬼がどこかへ連れて行ってしまい詳細はわかりません。



でも、今、この子供を…


ーーーーー


ここまでを書いた所でしのぶが私の手を止めた。





「たくさん、
 辛かったですね。

 辛いことを思い出させてしまってすみません。

 でも、あまり頑張りすぎないで下さい。

 今は赤子のことでも不安でしょうし、
 無理に苦しみを掘り起こす必要はありませんよ。」





しのぶは、優しく言った。





「あなたの名前は?」





ーーーーあなた


しのぶの手をとり
掌をなぞるように一文字ずつ指で書いた。






「あなたですね。
 まずは赤子のことを解決してから1つずつ進みましょう。
 過去は過去です。
 あなたには、未来があります。
 自分を責めてはなりませんよ。」







ーーーーーこくん。

頷くように返事をした。





「ここへあなたを連れてきてくれた煉獄さんも、あなたをとても心配していましたよ。

 ほぼ裸の女子を傷つけていないか、身重な身体と部屋の環境、本当に気に掛けていました。」





太陽の人。

あの人が来てすぐ、

私は気を失っていて気づいたらここに居た。


あの人がそのまま私を運んでくれたんだ。




とても温かい人だったな…。

きっと、とても優しい人なのだろう。





また会えたらいいな。

と、ふと思った。


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