2月14日、
バレンタイン当日。
お互いに分刻みのスケジュールの中、深夜にようやく照のマンションで合流することができた。
「照さん、お疲れ様です! 遅くなっちゃってすみません……」
「お疲れ、蘭。全然大丈夫。帰ってきてくれただけで嬉しい」
照は蘭を迎え入れると、愛おしそうにきつく抱きしめた。しばらくそうして充電を済ませた後、蘭は持ってきた小さな紙袋を少し照れくさそうに差し出した。
「あの……これ、バレンタインです。手作り、なんですけど……」
「え、マジ!? 蘭ちゃんの手作り!? 超嬉しいんだけど!」
いつもはクールな照が、チョコレートを見た瞬間にパッと子供みたいに目を輝かせる。
中身は、甘さ控えめのトリュフチョコレート。さっそく一粒口に運ぶと、照は幸せそうに顔を綻ばせた。
「うまっ……! 甘すぎなくて最高。これ、毎日食べたい」
「ふふ、良かったです。照さんチョコ大好きだから、喜んでもらえるように一生懸命作りました」
ソファに並んで座り、照が嬉しそうにチョコを食べる姿を眺めていると、照がふと、蘭の持っていたもう一つの大きなバッグに目を留めた。
「……ねえ、蘭。そのバッグの中にあるのって、もしかして……」
「あ、これですか? これは、ME:Iのメンバーとか、いつもお世話になってる番組のスタッフさん用の義理チョコです。明日配る予定で……」
そこまで言った瞬間、照の顔からさっきまでの笑顔が消え、じっと蘭を見つめてきた。
「……他の男にもあげるんだ」
「えっ? あ、でも、男性スタッフさんには既製品の小さな詰め合わせですし、手作りは照さんのこれだけですよ?」
蘭が慌てて弁解するものの、照はチョコレートの箱をテーブルに置くと、蘭の肩を掴んでソファに押し倒すようにして顔を近づけた。
至近距離で見つめる照の瞳は、本気で拗ねているような、少し危険な熱を帯びている。
「手作りじゃなくてもヤダ。蘭ちゃんが他の男にチョコ渡すところ想像するだけで、ぶっちゃけめちゃくちゃ嫉妬する」
「つ、照さん……顔、近いです……っ」
「いつもお仕事頑張ってるのは偉いと思うけどさ……。今日くらい、俺のことだけで頭いっぱいにさせてよ」
そう言うと、照は蘭の唇を奪った。
口の中に、先ほど彼が食べたチョコレートのほろ苦くて甘い香りが広がる。
いつもより少し意地悪で、独占欲が全面に出た、深くて長いキス。
「ん、っ……ふぁ、……照、さん……」
ようやく唇が離れたときには、蘭の目はすっかり潤んでいた。
照は満足そうにニヤリと笑うと、蘭の耳元に唇を寄せて、低く甘い声で囁いた。
「明日、他の人にチョコ配るときは、俺の顔思い出してね? 蘭ちゃんのもの、全部俺のだから」
「もう……照さん、本当に独占欲強すぎます……」
「蘭ちゃん限定ね。……ほら、まだチョコ残ってるから、次は蘭ちゃんの口から食べさせて?」
外の寒さを忘れるほどに熱い、二人だけの特別なバレンタイン。
誰にも言えない秘密の恋は、イベントの夜をさらに甘く、刺激的に彩っていくのだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!