ぐっと背筋を伸ばして、溜息を吐く。
学校、ほんと疲れるな〜…
そう思って早歩きし始めた途端、ぽつ、と何かが当たって肩に染みができる。
予想的中、雨が降ってきた。しかも本降りっぽい。
水溜まりを踏んで、びしゃびしゃと音が鳴る。急ぎすぎたんだと思う。
だから、信号が赤なのにも気づかなかった。
ブゥン、横から車の音が聞こえる。
ドンッ、と鈍い音を立てて、私の身体は宙に舞った。
周りから聞こえる声を無視して、私は瞼を閉じた。
…ま…
え……
…き……
…ここ、どこ?私、轢かれて死んだはずじゃ……
天国にしては…なんて言うか、庶民的な…
てかこの男の子は…?それに向こうから走ってくる女の人もだれ…??
私は高二でこの子小…一くらい、よね?あれ、どうしてちゃん付け…?いや別にいいけど…
え、えぇぇ?!いや、ちょっと待ってよ…!…あれ、そういやなんから体が軽いような気も…
恐る恐る手を見てみれば、明らかに高二の手では無い手が。
探偵事務所…初めて聞いたし見たな。
倒れてた…か、そんな感じなんだ、よし。ここは申し訳ないけど嘘をつかせてもらおう…
昔からの得意技である泣き真似で、少し嘘をつかせてもらう。めんどくさい解釈されんのダルいし…
警察行って保護されるよりかはマシ…か。
少し、居させてもらおう。本当に、少しだけでいいから。
[続]
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!