リドルはある日を境に
"声を失ってしまった"
リドルはある日を境目に、何故か言葉を発さなくなった。
最初の頃は何か錬金術で失敗してしまったのかと思いつつも、少しサポートするだけで良かった。
だが、時が経つにつれて、リドルが泣いている時を
いくつか見る事があった。
…その度心が痛くなった。
リドルは俺を呼ぶ時、小さな鐘を鳴らす
呼んだ後は紙などに要件を書く。
それが最近の俺達だった。
言葉を交わせず、おはようも独り言のような…
そんな虚しさがあった
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ある日、フロイドが食堂で俺に話しかけてきた。
かなり珍しい事だ。
それは、人魚姫が王子に恋をして、
足を貰う代わりに声を引き渡すというもの。
けれどその人魚姫は
王子に愛されなくて、泡になって消えてしまう
…王子とのキス?
その言葉を聞いた瞬間
俺はリドルの元へ向かっていた。
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僕は机に向かい、字を書く
明日
"海に向かうから"
…僕はあの日、
錬金術である薬を作った。
…ある人への気持ちを
この身と共に泡として消してしまう為に。
そして明日は"タイムリミット"
海に向かい、自らの身を投げて。
僕は泡となる。
…怖くない訳じゃない。
本当は物凄く怖い。
皆の記憶からも泡となって消えてしまうから、
でももうおしまい。
…"トレイへの気持ちを消すにはこの方法しか無い"
その瞬間勢い良くドアを開けて入ってきたトレイ。
彼は息を切らしていて、
多分走ってこちらへ向かってきたのだろう
でも、何故?急ぎの用など無いはず…
…まさか。
バレていた。
最悪だ。
僕は俯いた。
僕は彼の言葉を無言で聞いている。
"もう全てが遅すぎるのだ"
嘘だ。
今更。信じられないよ。
僕はいつの間にか、
目からポロポロと涙を零していて
そう言ってトレイは僕にキスをした。
僕はトレイに抱きついた。
そして思いっきり泣いた。
全ての思いを吐き出すように。
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金魚ちゃんの泣き声が聞こえる。
きっと成功したのだろう
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。