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第3話

騒がしいやつ
31
2018/06/13 16:19
 今日もまた1日が終わった。淡々と授業を受け、掃除をし、帰路につく。結局続かないから部活もやらない。対人関係もなにも無い僕の生活に、ある日突然変化が訪れた。

出席番号6番 川谷 亮
ギターを練習している。

僕が知っている彼の情報である。彼はなんの前触れもなく、僕に話しかけてきた。クラスの中心グループではないが常に周りに友達がいる、人付き合いのうまいタイプ。

「なぁ、お前歌える?」
「は?」

これが僕らの初めての会話。まったく、酷いものである。なんでも彼はギターを練習しているらしく、バンドメンバーを集めているそうだ。

「瀬奈ってさ、歌好き?よく音楽聴いてるか
らさ」
「え?まぁ…。ふつーかな。」
「歌、歌ったりするの?」
「そんな人前で歌うような事はしないよ…。」
「良かったらさ、俺とバンド組まねぇ?」
「…は?」
「いやー、とりあえず2年全員に聞いてみたけ
ど誰も居なくてさー」
「ちょ、人の話聞いてる?!」
「いちおー、先輩とか後輩にも聞いたんだけど
さぁ」
「聞く気ないよね?!」
「お?悪ぃわりぃ。なんだっけ?」

あぁ、疲れる。急にそっちの状況伝えられたってどうしろって言うんだよ。そもそもこいつ、完全に僕の言うこと聞く気ないだろ。
バンド?無理無理。どうせ、キラキラした青春送りてーとか思ってるんだろ。残念だけど、僕には無縁だ。さっさと諦めて次のテストの勉強でも…

「俺たち涼と亮で名前一緒じゃん?だからさ、
『ダブルアール』ってどうよ?」
「いや、ダサすぎるだろ!」

ツッコミを入れた瞬間、亮がニヤリと笑った。

(しまった…)

「お、やっぱり俺とバンド組んでくれるの
か!なぁなぁ、なんて名前にする?」

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
なんてことだ…!
1番面倒くさそうなやつに捕まった…!

「もう…何でもいいよ…」
「よっし!ボーカルゲット!!じゃあ涼はバン
ド名考えといてくれよ!俺はベース探してく
るわ!」

もういい、こうなったら適当に折り合いをつけて辞めてやる。

(とりあえずバンド名考えとくか…)

ご機嫌で去っていく亮を尻目に、僕は盛大にため息をついた。既に平和な生活から、どんどん離れていってしまっている。

(さようなら、僕の平和な日々…)

僕はまだ、亮から提案される壮大なアイデアを知る由もなかった。

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