目が覚めて午後。
結局昨日は父からも松田家のお願いを聞くように、とLINEをされた。
父からの連絡は珍しいのでまぁ、そこそこの感謝の気持ちは芽生えた。
大人は理不尽と嘘でできたから。
仕方ない、今日のされた事は呑み込む。
さながらアバ茶を飲むように苦しみながら。
「あっ、こんにちは! ごめんなさい、昨日の内にお話をしたかったのですが……」
「いえ、大丈夫ですよ 何処でお話しましょう」
さすが松田家というか、鶴音の人柄だろうか。
家を避けて近くのカフェを選んだ。
険悪な雰囲気は隠しているつもりだったのだけれど。
それ以外の可能性も加味してとりあえずカフェでお茶をすることになった。
テラス席に座り、メニューをそれぞれ手に取った。
「何頼みますー? 私もう決めてて、これです アップルティーゼリーパフェ」
「美味しそうですね」
キラキラしたアップルティーゼリーと滑らかそうなホイップクリーム、黒いビーンズが混ざる純正なバニラアイス。 確かに写真だけ見てもそそられる。
「じゃあ、私はこれにしようかな……」
無難にパンケーキを選んだ。
迷い過ぎてたらたらしていたら、鶴音を待たせてしまう。
店員を呼び、注文を済ませると鶴音はむすぅっと頬を膨らませた。
「全く……困った父を持ったものです」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。