揺れる電車内で、LINEの画面を見つめた。
絵文字を使う限り、私とは違うタイプの子なんだろうと勝手に、身勝手に推測した。
父の友人の方から何故かほぼ面識がないはずなのに私だけ呼び出された。
松田さん、という名前のいわゆる上級国民のソレの旦那様らしい。
以前、一度松田さんの娘さんと会ったことがあり、なんとなくLINE交換をしたきりだったがまさかその娘さんと連絡を取るとは思わなかった。
つるね、松田鶴音。 珍しい名前だが如何にも高貴的なお嬢様感を醸し出す名前だ。
山内れいな、れいなという私の名前もあながちお嬢様っぽいのかもしれないし世間一般から見れば私の家庭も裕福な家庭に入ると自覚している。
「次は 口虚駅 口虚駅 お出口は右側です
The doors sudden right side open.」
私はドア側に移動し、開いたドアから出てそれから駅を出る。
松田家が駅近で良かったと思う。
私なら絶対に迷っていたのだから。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!