「何かあったんでしょう。」
ファイルと資料の整理をしながら、先生は私に言った。
「朝あった時も少しぼーっとしてたみたいですし。」
見透かされていたのか。
ここ、保健室に来た時以前に、朝、昇降口で出会った時から。
保健の先生って、一体どこを見てるんだか…。
すごい、と素直に思った。
「すいません、なんか💦」
「あー、いえいえ、僕は大丈夫ですよ。もし何かあったら聞きますよ。」
悩んだ。話すべきなのか。はたまた話さないべきなのか。話さなくてもいいのか。どーすべきだ…?
第一、あんなの恥ずかしくて言えたものじゃない…というか…。
…。
「先生、は、えっと…。」
「…なんですか?」
「キ…」
「やっぱりなんでも…」
前言撤回。「キスしたことありますか」なんて聞けたものじゃない。辞めておけ…、
「キ…?」
ぐいっと先生と体の距離が近づいた。
ちょっ、と、、、近い…。無条件に熱くなる。熱があるせい、だ。絶対。
なに、この言わざるを得ない状況は…!!!!
「キス…、したこと…あり…ま…………すよね、すみません、なんか。」
なんてことを。
こんなかっこいいイケメン教師がしたことないなんてあるもの…
「ありませんよ笑」
なんてことだ!!!!!
「う、嘘とかいいですって。」
「ビジネス上の話だと思ってますね?」
「そりぁ思いますよ」
「なんですか、それが体調を崩した理由ですか?」
「あ、いや、その…」
「キスされたとかって話ですかねぇ。」
──!!
この先生分かってるな??
「あぁ、当たっちゃった感じですか、」
くそ、憎めない…。
どうもベッドで頭をぶつけたことが頭から離れず、、、。
「なるほどね……。ちなみに、今保健室誰もいないんですよ。新垣先生も朝学校に来たにも関わらず、呼ばれて飛び出て行きましたからね。」
「そ、そうなんですか」
「少し、いいですか?」
「…?」
「私、いつも放課後は校舎の窓を閉めて回ってたんです。白野さんは気づいていなかったかもしれませんが、いつもあなたの声が聞こえる度に足を止めていたんですよ。」
何かを思い出すような素振りで、にこやかに笑った。
「頑張ってるんですね。毎日楽しみにしています。」
それからの記憶はなかった。
目覚めたら坂川先生が「目が覚めましたか」と言っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。