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第28話

伝えるべき人に伝えること
「うっす。」

「あっ…うぇっす。」


指定の時間に蓮理の元へ行った。
蓮理のクラスでは主張の真っ最中だった。


「周り…うるさくてごめん。」

「いや、大丈夫…なんだけど…何?」


蓮理は少し黙った後、ゆっくりと顔を上げて真っ直ぐに私を見つめて言った。


「坂川のこと、好きなのか。」


気付いていてその言葉を放ったのか。
はたまた改めて聞いたのか。


「好きって言ったらどうするの?」


蓮理の中で何かが動いた音が聞こえたように感じた。何も思っていない訳じゃない眼差しを、無視することも、逸らすことも出来ず、ただただ私は蓮理の目を見つめた。


「俺は出来ないことをするとは言わない。だから応援なんかもできねぇ。」

「でも。邪魔なんかもっとしたくねぇ。」

「羽音には笑ってて欲しいから。」

「羽音が隣でその笑顔を見て欲しいって思ったのが坂川ってことなんだろ」

「それなら俺はいるべきじゃない。」

「羽音は自分が幸せになれるように、相手を選べばいい。」


蓮理の言葉は止まることを知らないかのように溢れ出ていた。
途切れ途切れに口から溢れ出る言葉に、蓮理は空を仰るようにして見上げた。

だが見えるのは広大な空ではなく、ただの天井。
清々しくなれるわけでもなく、蓮理は向き直った。


「正直。羽音が俺のことなんとも思ってないって、悲しい事って訳じゃないかもな。どちらかと言えば悔しい、って言った方が近いかも。」

「どういう…?」

「ん?だって好きな奴が自分以外の奴と幸せになりたがってんだぜ?」

「…なるほど…。」


分かっているのか分かっていないのか、曖昧な表情を浮かべて悩む私に、蓮理は笑いながら言った。


「んじゃ、そんだけ。」


いつもの蓮理ならここで私の頭にポン、と優しく手を置くだろう。
でも今日の蓮理は振り向くことなく私に手を振った。その後ろ姿に私は声を発することが出来なかった。





もうすぐシフトの時間。
お昼休憩には戻ってきて欲しいと言われていたため、教室にもどろうと思う。


私は衣装の白衣をなびかせて、一歩踏み出し、歩き出した。