されてたって…なに?
私なにしてたの?
起きた時ちゃんと寝てた。
ベッドの布団も乱れてなかった…。
「ねぇ蓮理。私なにされてた…?」
「ほんとに言ってる?」
「え…」
「寝てる間、何か感じなかった?」
「何も…。」
「そっかぁ…。んじゃ、俺の勘違いだったかな。」
「何を見たの…?」
「分からない。はっきりと見たわけじゃないからから。」
ここまで言うと、蓮理は「じゃ、戻るわ」と言ってどこかへ行ってしまった。
結局なんだったのか分からないまま、昼休みが終わった。
頭の中が空白だらけだった。
蓮理の言う、「坂川の奴とそういう関係…」まるで分からない。
まずそういう関係ってなんなの?
どのことを指すのだろう。
まぁいいか。
私を見つけた時の話をしてくれた坂川先生ならいつか言うはずだ。
そう信じていよう。
side / 蓮理
ガラガラ。
「おい」
「あっ…、清宮さん。なんですか?」
「お前さ…」
「なんですか?」
「教師の自覚あんの?」
放課後の保健室。
珍しく誰もいない。そのわけはみんな早帰りの日だったからだ。俺だけが、保健室にいる。
「なんですか、急に」
「とぼけた顔しやがって…」
「随分とケンカ腰ですね。」
「今日の三限目の終わり。」
「ほう。」
「…。俺、見た。」
「そうですか。」
こいつ…!!
いつまでとぼけた顔しやがるんだ…。
もしかして覚えてないのか。
それともただの見間違い…?
「んだよその返しは。」
すると坂川が走らせていたペンをカタッと置いた。
「キス…。したのか。羽音に。」
「清宮くんは…白野さんが好きなんですか。」
「…。」
たった今振られた俺に傷をえぐるようなこいつまじ覚えとけよ…。
「青春してるんですね。」
「てめぇ…!!」
「さ、早く帰りましょう。今日は早帰りの日です。いつまでも残っていてはいけません。」
「明日。」
「?」
「明日もう一度くる。」
「はい。」
背を向けた。
心の中でモヤモヤが溜まって行く中、扉を開けたその時。
「しましたよ。」
バカ静かな保健室にその声だけが響いた。
「は…?」
「さっきの返事じゃないですか。」
「てめぇ本気で…!!」
「立場って…人間を苦しめますね。」
そして、背中を押され、扉を閉められた。
俺もした。
だから何も言えないのは分かってる。
今の俺はただの独占欲で動いてる。
坂川を責めたいわけじゃない。
もう羽音を独り占めしたいとも強くは願ってない。
自分が満足したいだけなんだ…。
そう思うと涙が溢れてきた。
でもこんな所で泣いていられない。
強く、強くありたい。
誰かが羽音を泣かしたときには、俺がいてやれるほどに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!