花火大会の後から、まるで心にポッカリ穴が空いたような違和感を感じていた。
何故か満たされない心に俺は不快感を抱きつつ、いつもと変わらない平凡な毎日を過ごしていた。
俺は帰り際に駅の書店へ入った。
漫画コーナーの隣に設置された絵本のコーナーが目に入った。
その中でふと目が止まった絵本があった。
表紙のお姫様は

何故か涙を流していた。
そして何故か本の表紙に雫が零れ落ちた。
何故か俺は涙を流していた。
その時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。
その声を聞いた瞬間、涙が溢れ出して止まらなかった。
胸が痛くて、苦しくて。
忘れちゃ駄目だったはずの声の主の名前も顔すらもが思い出せなくて。
悔しくて。
俺はただ「見つけてくれてありがとう」と言った彼女の言葉を噛み締めてその場に泣き崩れることしか出来なかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!