何これ……どういうこと……!?
誰かっ……!
誰か助けてくださいっ!
怖い。
怖い怖い怖い。
誰か……誰か……!
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遡ること数分前___
私、谷地仁花は呑気に歩いていた。
私がマネージャーを務める烏野高校の男子バレー部の朝練に行くために。
駅から出た先は、朝が早いからか、いつも通り人が少なかった。
駅前の時計を見ると、針は6時30分を指していた。
今からすごい楽しみ!
どこからか子供の声が聞こえたような気がして立ち止まった。
こんな朝早くに駅に来る子供なんてそうそういないよね……?
空耳かと思ったその声は、だんだんはっきりと、
どんどん苦しそうに聞こえてくる。
当たりを少し見回してみたが、それらしい子はいない。
……やっぱり気のせい?
今度は凄いはっきりと聞こえた。
どこかに助けを求めてる子がいる。
声の聞こえてきた方向に歩いていくと、脇道が見えた。
子供がすすり泣く声が聞こえる。
目の前にある脇道は、日が登っているにはとても暗く、
私一人で入るには相当の勇気が必要だった。
子供のしゃっくりが聞こえる度、私の心臓の鼓動が速くなる。
小さい子一人助けられなくてどうする。
今慰められるのは自分しかいないかもしれないのに。
勇気を出して、道を進んだ。
一歩。また一歩。
進む度、ここだけ世界から切り離されているような感覚に陥った。
声は確実に近づいてきている。
ただでさえ暗くて気味が悪いのに、道の左右の建物に巻きついているツタが、より気味悪さを加速させた。
誰か……いる?
うっすらと、子供の影のようなものが見えてきた。
……今思えば、あの距離で子供の泣き声が聞こえたことに、疑問を抱くべきだったのかもしれない。
私は、"子供だと思った"その影に声をかけた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。