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2021/08/26

第9話

暗闇の中のセカイ。
井上 紗羅
ハァ,ハァ,ハァ,ハァ
司書
大丈夫?
ううん。と言わんばかりに私が首を横に振ると、司書さんは、すべてを察したみたいな表情を浮かべた。

司書
奥の席、どうぞ。

それは、私を守るための一言だった。

司書さんにありがとうと伝え、私は重い足を引きずるようにしながら、扉からは見えないであろう奥の席まで行った。

井上 紗羅
ここなら…。
佐東 凛斗
どうしたの?

間が悪かったようだ。

なんで、こんなところで会うのだろうか。
佐東 凛斗
足、大丈夫?
井上 紗羅
う、うん…。

そうやって返すことしかできなかった。

1人にして欲しい。そんな私の気持ちを彼はおそらく気づいてない。

そんなことをしているうちに、授業開始のチャイムがなった。
佐東 凛斗
授業…行かないの?
井上 紗羅
えっ…。

図星を付かれた。そして、何よりも驚いているのは、私に声をかけた彼自身も教室に行く素振りを見せないということだった。
井上 紗羅
佐東…くんも?
佐東 凛斗
行かないよ。
佐東 凛斗
こんなこと聞いちゃあれかもしれないけど…。
井上 紗羅
うん。
佐東 凛斗
なんで、行か…ないの?
井上 紗羅
なんで…か…。

考えたこともなかった。

でも、言えるのは辛いからということ。
井上 紗羅
いじめ…られてるからかな…。

少し考えて導き出した答えを口に出す。

佐東くんは私のことを嘲笑ったりしないで、
佐東 凛斗
そっか。

と、小さく頷いた。
佐東 凛斗
じゃあ、なんでいじめられてるのに…が、学校に来てくれるの?

"来てくれる。"きっと、来るにしちゃうと、あたかもいじめるみたいになっちゃうから、あえて"来てくれる"という表現にしたのだろう。

きっと、いや、絶対いじめる気はないのだろう。

ただ、理由を知りたい。それだけ。
井上 紗羅
大学に入って、夢を叶えたいから…かな…。
佐東 凛斗
夢って?
井上 紗羅
パティ…シエール…。

小さい頃から、ずっとパティシエールに憧れてきた。

中学になって夢を言うと、「まだ幼児みたいなこと言ってるのかよ」とか、過激な言葉を投げつけられたから、あまり人前では言っていなかった。

でも、なぜか佐東くんには言えた。

それは、おそらく彼はこの事を言わないと勝手に思ってたから。
佐東 凛斗
素敵な夢だね。
佐東 凛斗
いつか、パティシエールになって、スイーツを作ったら、食べさせてよ。

彼は肯定してくれた。それだけじゃない、期待もしてくれた。
井上 紗羅
うん。
佐東 凛斗
僕、スイーツ好きなんだ。
佐東 凛斗
小さい頃は、お菓子に関わる仕事をしようとおもってた。
佐東 凛斗
でも…

何かをいいかけたところで彼は話すのを止めた。

なぜかは分からない。

でも、彼は目に涙を浮かべていた。

無理に聞くのは止めとこう。


図書室の中が静寂に包まれた。