にっこり、あくまでも圧をかけないように笑って言ってやった。
そう言われ、自分の手元を見ると、確かにグーに握ってあった。
白布先輩と瀬見先輩がようやく反省の意を示してくれた。
……なんでこうなった??
天童先輩がそう言って私達にスマホを向ける。
……なんでこうなった???
どこかぎこちなく、瀬見先輩は応える。
さっきまで明るい雰囲気があったはずが、急に沈黙が訪れる。
瀬見先輩……いや、これが普通の反応なんだろうなぁ。
瀬見先輩をチラっと見ると、川西先輩の方に走っていた。
失礼な。
そうこうしているうちに、いつの間にか宿泊所の前に来ていた。
だって、私離れてる間になんかあっても嫌ですし。
というか校内巡回中の人こっちに少し着いてくれたって……
私はポケットに突っ込んでいた紙を取り出した。
中にちゃんと書いてあることを確認し、先輩に手渡す。
背を向けたそのとき、白布先輩は紙を見ていたが、
瀬見先輩は心配そうに私を見ていたことを、私は知らなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。