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第3話

こんなやつ 3
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2020/05/08 06:47
イベント当日。御坂はある程度の荷物を持ち、駅前で黒子達と待ち合わせをしていた。何故駅前なのかと言うと、行き先が少し遠い所らしく、車だと人数が多すぎるので電車で行くことにした、との事らしい。それは良いのだが、御坂の心中には心配事が2つほどあったのだ。1つは、御坂はずっと学園都市で暮らしてきていたため、電車に乗るのが人生初という事。2つ目は、そう。一方通行の事だ。御坂はあの実験の時以来ずっと会って居ない化け物と、これからお泊まり会をしようということになっているのだ。思い出すだけで反吐が出るようなやつと、何故お泊まり会などしなければいけないのか。周りの人に危害を食わえないか。対面して自分はどうすれば良いのか。それが憂惧で仕方がなかった。

黒子「ーー……お姉様?どうかなさいましたの?」

御坂「あ、あぁごめん黒子、なんでもないわ」

黒子「…そうですの?もし何かあったら遠慮なく私にご相談してくださいまし」

御坂「ありがと黒子、ほんとになんでもないから!心配しないで!」

そう言って、御坂は苦笑いを浮かべた。上手く笑えているかどうかすら分からないが、黒子を安堵させることくらいは出来ただろう。
ずっと自分がどんよりとしていても駄目だと思い、頬を1度両手で叩き、気合いを入れ、自分に言い聞かせるように。

御坂「(……よし、シャキッとしろ御坂美琴!あんたは出来る子!)」

すると、聞きなれた女の声が、遠くから御坂達の名前を呼んだ。

佐天「御坂さん!白井さ〜ん!」

初春「ち、ちょっと待ってくださいよ佐天さん!」

ロングヘアーの少女が此方に手をブンブンと振りながら走ってきている一方で、頭に花をつけた少女はへとへとになりながらもう片方の少女を必死に追いかけている。

御坂「あ、佐天さんに初春!」

黒子「遅いですのよ2人共!」

黒子は怒ったように言っているが、顔はとても楽しそうだ。

佐天「すいません!ちょっと道に迷っちゃって」

初春「さ、佐天さんたら、道が分からないのに、ずんずん進んじゃうから、も、もう、私無理です……」

佐天「あはは〜、ごめんって〜」

ずっと走っていたのか、息が続かず途切れ途切れで喋っている。それを見た黒子と御坂は、自然と顔が歪んでしまっている。

御坂「(さ、佐天さん…恐るべし)」

佐天「あれ?まだみんな来てないんですか?」

初春「ほんとですね、まだ私達だけしか見当たらないですけど…」

御坂「え、えぇ。まだ来てないわよ、多分もうそろそろ来ると思うんだけ、ど…あ」

黒子「…あれは、噂をすればと言うやつですわね」

黒子が見た先にいた人物は、つんつん頭の少年と銀髪の長い髪の少女ーー……と、まだ後ろに数人。後ろの人物は遠くて良く見えない。だが、特徴を見る限り、見た事がある人ばかりだった。まず、特徴的なアホ毛に、私によく似た顔立ちの少女。その隣に居るのは、白い髪に、華奢な身体の…少年、だろうか。その少年を見た御坂は、怖じ恐れた。

御坂「……あ、」

まさに、顔面蒼白。覚悟はそれなりにしていたが、やはり目の前に"それ"が訪れると、どうしても怖じてしまう。

初春「ーーあ!あ、あの人!この前私を助けてくれた人ですよ!」

御坂「え?」

佐天「あぁ!この前初春が言ってた人?あのつんつん頭の人?」

御坂「(あぁ、あいつ、初春の事も助けてたんだ。)」

初春「いえ、違いますよ!あの後ろの方にいる白い人です!」

そう言って、初春が指を指した先にいたのはーー。

御坂「あ、あいつに?一方通行に?」

黒子「一方通行…?どこかで聞いたことがありますわね」

佐天「…あ!もしかして、学園都市第1位の!?」

初春「え、えぇ!?だ、第1位だったんですか!?」

黒子「……私達、無駄にレベル5との縁がありますわね」

御坂「ち、ちょっと!!」

信じられない言葉に、咄嗟に言葉が出てしまう。

御坂「(一方通行が、初春を助けた?そんなわけ無いじゃない、あいつは、あいつは人を助けるような人じゃないはず………………あ)」

そんなことを考えていると、数日前に上条から言われた言葉を思い出した。

『あいつは、変わったんだ。』

御坂「(…あの言葉は、本当だったの?)」

佐天「どうしたんですか?御坂さん」

黒子「お姉様?」

御坂「そ、それってホント?あいつが初春を助けたって事!」

初春「御坂さん、第1位さんと知り合いなんですか?」

佐天「えぇー!?第1位さんと知り合いだったんですか!?先に言ってくださいよー!」

黒子「きぃー!お姉様は何人の殿方とお知り合いなんですの!!敵が増えていく一方ですの!!う゛あ゛ー!!!」

御坂「い、いや、知り合いっていうか、その……」

御坂がみんなにどう説明するか困っていると、あちらから歩いてきていたつんつん頭の少年に話しかけられた。

上条「おーい、御坂達ー」

禁書「あ!短髪なんだよー!」

2人が手を振ってきたので、(黒子を省く)御坂達は手を振り返す。

佐天「あの人が御坂さんの気になっている人ですね?」

御坂「え!?い、いや、気になってるとかそんなことは無いけど!」

黒子「全く、あの殿方はまだ懲りていないようですわね…絞めてきてやりますわ」

初春「し、白井さん…やめてくださいね」

佐天「いやー、にしても、命の恩人にこんな所で会うなんて、もしかして運命か何かですかね!」

初春「も〜、やめてくださいよ佐天さん!」

初春達がそんな話をしていると、アホ毛が特徴的な少女が私達を見つけ、ぱぁっと嬉しそうな顔をし、ブンブンと手を振ってきた。

打ち止め「お姉様ー!!」

初春「あ、あの子!アホ毛ちゃんじゃないですか!」

御坂「え!?う、初春、打ち止めの事も知ってたの?」

初春「んえ、打ち止め?あの子のお名前ですか?」

御坂「あ、え、えぇ…まぁ」

しまった。と、口を抑える御坂を不思議そうに見た初春だったが、直ぐに何も無かったかのように話し出す。

初春「アホ毛ちゃんが探してた人って、第1位さんだったんですね」

アホ毛ちゃんから呼び名を訂正するつもりは無いらしい。だが、気にしていないのなら一安心だ。

打ち止め「お姉様!ってミサカはミサカは大声で呼んでみる!」

御坂「え、あ、数日ぶりね、打ち止め」

禁書「短髪!久しぶりなんだよ!」

御坂「うん、久しぶり禁書目録」

上条「電話ぶりだな、御坂」

御坂「(電話で話すと会ったということになるのかしら…)」

いつの間にか目の前まで来ていたことに少々驚くも、挨拶をして気分を落ち着かす。

そして、白い化け物に視線を向ける。一瞬目があったが、すぐに相手が視線を逸らした。が、御坂はそれを気にせずに話しかける。

御坂「……久しぶりね、一方通行」

すると、白い怪物は舌打ちをし、気だるそうにもう一度こちらに視線を向けてきた。自分から話しかけておきながら、少し強ばってしまう。だが、相手からの敵意は全く受けられない。すると、目の前の怪物が小さく口を開く。

一方通行「………そォだな」
御坂と化け物の会話、終了。
約3秒程度で会話が終わるなどということが今までであっただろうか。出会いたての人物との会話ですらここまで速いことは無いだろう。会話…と呼んでいいのだろうか。会話のようなものを済ませた一方通行は、バツの悪い顔をし、目を逸らした。それを見た御坂は、同様に一方通行から意識を遠のけた。ーーこの時、2人の考えていることは、こうだ。

御坂「(何よあいつ!せっかく話しかけたのにあの態度!?ほんっと人としてどうかと思うわ!2人だけなら口に出して言いたいとこだけど、今は周りに沢山人がいるし…!っあぁもう!!)」

一方通行「(…………めんどくせェ)」

御坂が脳内で1人の男に文句を吐いている一方で、文句を吐かれているとも知らない男はただ単に面倒くさがっていた。一応化け物にも思うことはあるようだ。すると、御坂の正面から2人の女性が歩いてきた。


黄泉川「お、皆揃ってるじゃん?もうそろそろ時間だし、中に入るじゃんよ」

芳川「張り切ってるわね、黄泉川」

黄泉川「そりゃあ張り切るじゃん!お泊まり会なんていつぶりじゃんよ?」

芳川「ふふ、ほんとね、少し楽しみだわ」

黄泉川と芳川の大人2人組だ。2人も大人なりにしっかり楽しんでいるようだ。

黄泉川「ほら、皆行くじゃんよ!自己紹介とかは室内に入ってからな!」

黄泉川が皆に向かって声をかけると、ちらちらと返事が聞こえ、やがて駅内に辿り着いた。





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切る場所が非常に悪い!でも流石に長すぎると思ったので切らせていただきました。やっとこさ御坂と一方通行の御対面…いや、やっとこさと言う程でもないですね。書く側からしたらかなり長く感じるんですよ。はい。

これからは、どんどん一方通行と御坂の絡みを増やし、御坂から見た一方通行の印象を変えていく予定でございます。少しでも気に入ってくれた方、面白い、楽しみと思ってくれた方は、是非お気に入りやハートお願いします。

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