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2018/02/19

第20話

紫陽花の花言葉は――……
??
――これ、そこのお嬢さん
あなた

へ?

それは、駅前のスーパーへ買い物に出掛けた時の事だった。
路地裏へと続く小路の前に立ちすくむタキシード姿の男性に声を掛けられた私は、恐る恐る「何ですか?」と応えた。
??
美しい貴方にこれを差し上げましょう
あなた

は、はぁ……

タキシードの男性が渡してきたのは、名前の通り淡い紫色の一輪の紫陽花だった。
??
では、私はこれで
あなた

あ、待って………!

紫陽花に気を取られていた私が顔を上げると、そこにはもうタキシード姿の男は居なかった。まるで瞬時にどこかへと消え去ったかのように。

紫陽花……なぜ紫陽花なのだろう。
そもそもあの人は一体。
慧くん
慧くん
――あれ、あなた?
あなた

慧くん………!

慧くん
慧くん
どうしたの?
あなた

あ、これ………

先程貰った紫陽花を彼に見せた。
慧くんは黙ってじっとそれを見つめると、「ああ、そうか」と何か思い出したかのように手を叩いた。
慧くん
慧くん
紫陽花の花言葉は辛抱強い愛情……だったはずだよ
慧くん
慧くん
でも何でこれなんだろうね。キミには紫陽花よりも薔薇とかもっと綺麗な花が似合うのに
あなた

……やだ、恥ずかしいわ

照れながら答える私の頭を優しく撫でながらそっと「好きだよ」と呟いた。

周りに行き来する者がたくさんいる中でそんな堂々と愛を語るなんて、とても恥ずかしくて居られないじゃない。
あなた

良かったら家寄ってく?

慧くん
慧くん
えっ、いいの?
あなた

いつもの事でしょう?

はは、そうだね。と照れ臭そうに微笑みながら私の手をさり気なく握った。


……その手は(猛暑日だと言うのにも関わらず)酷く冷たかった。そう、いつも以上にずっと。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あなた

――さ、上がって

慧くん
慧くん
うん、ありがとう
誰も居なかった自宅は、酷く静まり返っていた。その静寂さは異常なほどだった。

水道の水が滴る音どころか電気の通る音すらも聞こえない。と言うよりも音という音など何一つ耳には入ってこない。


まぁ、ほぼ一日中家を空けていたのだからそれもそうよね。
慧くん
慧くん
んー……あなたっ!
あなた

きゃ……っ!な、なによ……っ

慧くん
慧くん
んー……好きっ
ひっつき虫のようにぴったりと身体を密着させた慧くんは、私の肩に頭を乗せて首筋にキスをした。
首元や顔にかかる彼のくせっ毛がむず痒い。
慧くん
慧くん
旦那さんは?
あなた

今日も泊まりみたい

慧くん
慧くん
んー……そっか!
じゃあ大丈夫だね、と私の服に手を掛けたその時だった。玄関の鍵がガチャリと音を立て、ドアの開く音がこちらへと響いてきた。
あなた

―――!

この家の鍵を持っているのは私ともう一人………。
光
――何してんの?
――……光だけだった。