第46話

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2020/10/02 08:34





ピピッ
車が閉まった。
彼は相変わらず何も言わずにスタスタと歩いていく。
私たちはエレベーターに乗り、共に上へ上がった。
真っ暗な雰囲気の中、沈黙が続く。
一瞬で過ぎるはずの時間は、長く長く。
チンッ!
エレベーターが私たちの階へついた。
そして彼は、私の手を優しく包み込み、前を歩いて言った。
嬉しかった。
「オッパの手……暖かい。」
彼はこっちを向いて、ニコッと微笑んでからまた歩き出した。
ドアの前へつくと、彼は私たちの家を通り過ぎていった。
「オッパ??ここだよ?」
私は少し手を引っ張った。
[行きたいところがある。]
彼はそう言った。
「えっどこへ行くの?」
彼にそう聞いても、彼は何も答えなかった。
“ガチャン、”
新しいマンションには合っても合いきれないような古いドアが開いた。
「オッ、パ?」
彼は私の手をさっきよりも少しだけ強く引いてドアの向こうへ行った。
[見て、]
彼がそういい、私は彼が指を指す方向を見た。
「わぁ!綺麗!」
空には何万も灯る星が光っていた。
[これをあなたにずっと見せたかったんだ。]
そう笑顔で言った。
「綺麗だね、、」
今にも手が届きそうな星空に、私は手を伸ばした。
「ありがとう。オッパ。」
[ん?]
なんだかそう言いたくなった。
[なにが?]
キョトンっとした目で私を見つめる彼に、少し吹き出してしまいそうになった。
「ただ、なんとなく……」
私は満天の星と、手から伝わる彼の温もりに溺れた。




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