第57話

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2020/10/27 14:17




“ブチッ”
縄はようやく切れ、私は部屋を飛び出した。
靴も履かず、階段を昇った。
「お願いっ、お願いっ、」
お願いだから、生きててグク。
“ガチャっ、”
私は屋上のドアを開けた。
相変わらず古く薄汚れたドアは変わっていなかった。
震える手をぐっと握りしめ、前を向くと、そこにいた。
『あなたっ、』
「グクッ!」
真っ赤になった頬。
ボサボサの髪の毛のグクの方へ。
私は走りよった。
「いっ、」
それはすぐに遮られた。
[誰が近づいていいっつった?]
「っ、オッパ、、」
『おいその汚い手を離せよ!』
[あぁ?]
みんな殺意に充ちていた。
[残念だが、もうとっくに制限時間は過ぎてる。]
そういう彼に、
「お願い、お願いオッパ。」
私は手を合わせて何度もそう言った。
[じゃあ、チョンジョングク。]
[最後の言葉を言え。]
私の言葉が聞こえてないかのように、彼はそう冷たく言い放った。
『あなた.......』
グクは涙を流していた。
『ごめんっ、ごめっ、』
『一緒にいられなくてごめんなっ、』
「グク、諦めないでっ!」
私は大声で何度も叫んだ。
「おねがいっ!おねがいっ!」
『ごめんっ、』
『あなたっ、』
私はグクを見た。
『大好きだったよ。』
『ありがとう....』
グクは私に向かってそう微笑んだ。
『ずっと、ずっと、』
『“愛してる”』
「いやぁぁあああああ!」
その瞬間、グクの乗った椅子は、
屋上から落ちていった。
離された手を伸ばしても、どんなに伸ばしても。
もうグクはそこにいなかった。




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