なぜ怒ったのか、私には理解出来なかった。
私は彼に、申し訳ない気持ちも、悲しい気持ちも、何もわかなかった。
ただ、彼が何をしていたのか気になった。
そしてさっきのことを思い出した。
私が家を急いで開けた時、彼は靴を隠すように下駄箱へ入れたんだ。
私はソファから立ち上がり、下駄箱へ行った。
そしてゆっくり下駄箱を開けた。
ぐちゃぐちゃに2足重なったスニーカー。
私はそっと、まとめて取り出した。
「っ、!!!!!」
私は靴を手から落とした。
ブルブルと震える手。
おでこから汗が流れた。
私はもう一度、靴を拾った。
白かった靴が所々、真っ赤に染まっていた。
それは、絵の具のような鮮やかな色ではなかった。
人の血のような。
そんな赤黒い色をしていた。
まだついたばかりなのか、その赤色は私の手へもうつった。
そして生臭い匂いが、鼻をツンとさせた。
やっぱりこれは、血だった。
彼は怪我をした?
それともさっき言っていた友達が?
いや、それが本当なら、彼はどうして友達の家にいたと嘘をついたの?
まさか彼は、、
人を殺したの?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!