第35話

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2020/09/14 13:17






私はある限りの自分のものをかばんに詰めた。
鏡の前に置いてある化粧品。
棚に並んでいる小物。
タンスから溢れている季節の不揃いの服。
いつしか角に山積みになった、靴下や下着。
全部、全部、全部。
あんなに長い時間ここに住んでいたのに、キャリーケースに入るほどしかない私の荷物。
ほとんどグクの物だったんだと、悲しくなった。
玄関の方を向くと、目に入るグクとの写真。
グクは笑顔でピースして、
私も隣で笑ってるの。
なんでこうなっちゃったのかな。。
写真にゆっくり手を伸ばした。
「幸せ、、だったなぁ、、」
堪えきれなかった涙が溢れた。
「戻りたい、」
「戻りたいよ、、」
何度言っても、ただ静かな部屋に響くだけ。

《幸せになろう。》
そう言ってくれる人もいない。
私は唸るように泣き続けた。







ーーガチャ
その時ドアが開く音がした。
「っ、」
すぐ目に入ったその顔。
『お前、、』
『なにしてんの。』
そう言って荷物と私を交互に見るのは、









他の誰でもない、彼だった。

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