第38話

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2021/02/21 08:36





あんなにも聞きたかった言葉。
今はもう、聞いても何も思わなかった。
「遅い、」
「もう遅いんだって。」
私は彼の体を押した。
それでも離れてくれない彼。
「離して」
『やだ。』
「お願いだから離して」
『嫌だよ、、』
彼は鼻をすすりながらそう言った。
『どこにも行かないで。』
「先にいなくなったのはグクでしょ。」
『ごめん、マジでごめん。』
私の肩は少しずつ濡れた面積を増やして言った。
『俺から離れないでよ。』
『もうどこにも行かないから。』
もうそんな言葉に惑わされない。
そう決意していた。
「遅いよ。」
「もう、グクの元に居れない。」
「これ以上辛い思いをするのは嫌だから。」
『おねがい。』
「…ごめん」
私はさっきよりも強い力で押した。
頬が沢山濡れて、目が真っ赤な彼。
昔だったら、私が思いっきり抱きしめてたのにな、、
なんて。
でももう気にしない。
私は握っていた写真をゴミ箱に投げ捨てた。
『待って、、いやだよ』
そう私の手を握る彼を振りはらって、
私はドアを閉めた。



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