ある日の朝、
その日は梅雨だった。
雨がうるさいくらいに降っていた。
グクは雨が嫌いだからか、
朝から機嫌が悪かった。
グクは朝、
ずっと私を無視し続けていた。
それでも日常は来るわけで、
私たちは一緒に家を出た。
マンションの3回の端の部屋だった。
家を出ると直ぐに階段があって、
急なのに長い階段だから、
雨の日は特に降りるのに気をつけていた。
「グク?気をつけてね!」
そう笑顔で言って、降りようとした瞬間の事だった。
視界がグラッと揺れた。
空と地面が交互に視界に入った。
揺れが納まった時、目を開けると、
そこにはうっすらと目を開けている彼がいた。
あの時をまだ覚えている。
あの時彼は、笑顔を浮かべていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。