第7話

キス
2,425
2025/04/18 14:30 更新





ザ────────ッッ…………ッ





冷たい大粒の雨が、
ざあざあ窓の外で降っている。





──
ぅわ…すっげ!! 超ゲリラ豪雨!
──
大森…大丈夫かなぁ……?
──
コンビニ行ったんだっけ、
雨宿りしてくるんじゃな〜い?


滉斗はちょっとだけ "大森" の単語に反応して、
ぱっと顔を上げる。

若井滉斗
………ね

先生に頼まれた資料をとんとんと揃える。


たいへんだと言ったら
友人ふたりも手伝ってくれた。



…………まあネカフェで元貴を誘うだけ誘って
まったく手につけてないだけなんだけど。




──
えーとー……、これが25ページで
──
………ぁ
若井滉斗
?どした?

向かい合って取り組む滉斗は
手元を覗き込む。








──
………キス欲しいなあ
若井滉斗
…ぇ
若井滉斗
き、キス……ッ、?!
滉斗からは
素っ頓狂な声が上がって、

…………咄嗟に肩をひっつかむ。





──
…や、ホッチキスも要るなって
──
大森に『欲しい』って連絡してて〜っ

けろっとした顔なりで、
また椅子をギコギコ鳴らしだす。



若井滉斗
ほっち、きす

いや恥ずかし…………

どんな聞き間違いだよ….?



──
は、ヒロww めっちゃ反応すんじゃん
──
えっ確かに
──
お前キスしてえの?
 
若井滉斗
…………ッば…!!?//

びっくりして顔が赤くなった滉斗は
物笑いされる。



──
うわー………ヒロも遂にかぁ
若井滉斗
っだから違……!!
──
まあモテるもんな?笑
──
残酷だわ〜っ……彼女くれ…

_______キスした?笑 もうやった?!?





この時間はとりあえずイジられ続くと

確信した滉斗は、


むす、と拗ねては
無理やり課題を済ませにかかる。




若井滉斗
……うっせうっせ




________…ウ゛ゥ゛ー…ッ….





……あ、


噂をすれば。





Motoki
Motoki
下駄箱来れる?
Motoki
Motoki
おっきめのタオル持ってきてほしい








………やべー……ニヤけてた…





スマホをポケットに突っ込む。



きっと元貴が居る玄関へ、

保健室から取ったタオルを持ってむかうことにした。








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外は昼間なのに暗い。

廊下はやっぱりちょっと涼しすぎる。



雨音が響くなか滉斗は、
真っ白のタオルを抱えて玄関に行く。






……………タオル、ってことは、

雨に降られて濡れてんのか……



また見れるんだ。
元貴の見たことないかお。





____ふいに、"あのとき"の寝顔が脳裏に浮かぶ。






若井滉斗
ぁ゛ー……

……無防備すぎて。

あのこてんと寝落ちした
可愛い横顔。



女の子みたいに淡麗な顔立ちなのに、
たまに揶揄ってきて。



若井だから見られてもいいか、みたいな。
そんなコト思って…くれてたり……






距離が縮まったと思ってもいいのか……?






若井滉斗
距離感には気をつけないと………








================================









若井滉斗
うわ〜やられたねぇ

バスタオルを両手に広げて、
滉斗が眉尻を下げて苦笑する。


大森元貴
さいあくう……

髪の毛が濡れてぺたんとなっている。

元貴は、
手の甲で顎につたう水滴を拭う。

若井滉斗
雨宿りしてこなかったの?
大森元貴
…が、っこうまで….
あとちょっとだったし
若井滉斗
見通し甘いなあ〜、……笑

揶揄われて、
う、とくやしそうにする。

大森元貴
タオルありがと………

ばふん。


視界がまっしろになる。

大森元貴
って、ん….わ、ぅ
若井滉斗
ゲリラ豪雨なんて降り始めたら
一瞬なんだからさぁ〜

わしゃわしゃ、とタオルで
濡れた元貴の髪を拭く。


大森元貴
う、……っちょぉ
若井滉斗
タオル……一枚じゃ足りないかもなあ

うーーん、とされるがままの元貴を眺めながら
考える滉斗。


大森元貴
ん、わ、若井…
若井滉斗
ん?さむい?
大森元貴
じ、じぶんで拭ける……

え、と声を漏らして

ぱっと目線を落とすと、


………口元をタオルで隠して、
上目遣いになり顔を赤くする元貴。




若井滉斗
ごご、ごめんっ?!! 癖で…っ

両手を上げて、
ば、と離れる。

若井滉斗
いっつも兄ちゃんにやってるから……
大森元貴
ふへ、若井らし

吃驚して元貴を見ると、
困ったみたいに照れて笑われる。






…………自惚れるなって思ったそばから……


引かれてないといいけど……






大森元貴
はぁ……制服乾かしたい
大森元貴
絞って教室で干したら乾くかなぁ

ぎゅ、ぎゅ、とびしょびしょの制服を握る。




______透けて見える、鎖骨と腹のライン。


滉斗は見ないように
必死に視線を飛ばしながら話す。




若井滉斗
えぇ〜〜……、教室で?
若井滉斗
ん ───…っ、


元貴は首元が濡れてきもちわるいのか、

ボタンを外して
ぱたぱた乾かしだす。


若井滉斗
……_____ぁ
若井滉斗
保健室に…乾燥機あったかも









・・・・・







大森元貴
勝手に借りてもいい、のかな…?
若井滉斗
へーきへーき、後で謝ればいいし

背中を押してベットに連れて行き、

シャッとカーテンを閉める。



若井滉斗
乾燥機かけるからー…
若井滉斗
脱いだら声かけて
大森元貴
う うん……



………よかった、バスタオル多めにあって。



制服乾くまで
くるまってればいいし。






ピチャ、…………ッ……



若井滉斗
………っ

不意に、
水が滴り落ちる音。




………今、カーテン越しで脱いでんのか。







しゅる、っ………ッ







きっと、制服を脱いだんだろう。


服が擦れる音と、
ばさりと床に落ちる音がする。






若井滉斗
ふ、ぅ゛ぅう…………

背中越し、

"脱いで着替えている"音を感じながら

滉斗はその場にしゃがみこんで
顔を腕に伏せる。






…………下心がありすぎる。



落ち着け、
友達として距離をつめていって、


それで…………






_________あの透けてた格好。


いや待てよ。

それはそれとして……

もうちょっとだけ
見とくのもアリだったんじゃ………





意外としっかりしてた腹回り。
ぐっと浮かんでる鎖骨と、喉仏________……











大森元貴
かい……っ…若井?
若井滉斗
っ、ハイッ!!!

ビクッと肩を跳ねさせる。

……元貴が呼んでいたのに気付く。





若井滉斗
わっ悪いッ
若井滉斗
もらう….



……つる、ッ…!!







着替えていた、ベットの場所へ
踏み込んだその、

_________瞬間。





滉斗がすべってつまづいた。




大森元貴
?……って、ぅ゛あッ
若井滉斗
う わ  ッ゛ッ…?!!!?


ドン、ッッ゛ッ………ッ







手の行き先を失くした滉斗は、

そのままベットに向かって元貴ごと
前倒れになる。








ぱさ、と後ろで
元貴の手から離されて落ちた制服の落下音。






若井滉斗
ごめ____…………


両手を突いて、
体重でベットが沈む。



大森元貴
……っ
若井滉斗
……………
若井滉斗
……あ……………




________…元貴の白い太腿と、ほそい腰。





裸体に、

タオルだけ被せて隠されている状態。




元貴の熱い体温が、

肌に触れてつたわってくる。



若井滉斗
.…ッ゛…ぅ、

四つん這いで、捕えている状態。





ゴクン゛、ッッッ……



滉斗の喉仏が音を鳴らす。







っ………はやく、退かなきゃ……………………








若井滉斗
え、と_______

ちょっと手を動かすと、

びくん、と元貴は反応した。




親指で、元貴の前髪にふれる。







大森元貴
わ、かい


桜桃色に頬を赤くして、

元貴がぐらぐら瞳を揺らす。




…………それから元貴は、

滉斗の鼻先で目をぎゅううと瞑る。







自惚れちゃダメだってわかってんのに。


落ち着かなきゃいけなくて、
裸なのも……事故で、


どれもこれも事故で……………………







目の前で、覚悟したみたいに瞳をつぶる、


_______俺の、大好きで愛おしい、


………可愛い元貴のかお。










キシ、…………ッ゛………ッッ




ベットの軋む音だけが、

静寂に響く。









大森元貴
ん、ぁ……む……………っ…!




_________期待するだけ、

無駄なの、に……………




…………?





_________え、



あれ……………あつくて………














================================












ガラガラガラ……ッ






──
…っあれ、王子先輩じゃないっすか!
藤澤涼架
もー…その呼び方やめてって〜笑

教室のドアを後方で閉めながら、

にへ、と首を傾けて笑う。




──
教室なんか来てどうしたんですか
藤澤涼架
あー………

ちょっとだけ教室内を見渡すと、

…………きゅっと目を細めて訊く。





藤澤涼架
元貴………大森くんは?
──
ッへ、?……大森なら

_______さっきまで
コンビニに買い出し行ってくれてて…






──
若井がむかえに行ったっす!


好青年の笑顔を浮かべて、
滉斗の友人は言う。




……涼架は、あーね、と軽く少し返事した後、


俯いて顔が見えなくなる。





──
先輩関わり……ありましたっけ
──
え、あれじゃね、
──
藤澤先輩……たしか吹奏楽で

_______ほら、あいつ作曲…みたいなさ。

そんなカンジで関わるんじゃね?



もう片方の友人が
談笑する。






──
…………、先輩?
藤澤涼架
…………どこ
──
?……へ
──
どこ、って

藤澤涼架
そっからどこに行ったの


先輩は、

ちょっとだけこわかった。




答えて、いいからって、

ふわふわしてるいつもとは違う、
問答無用みたいな

雰囲気を纏って。



──
た、たぶん保健……室かどっか
──
服乾かしてやるって言ってたもんな

藤澤先輩は、

それをよく聞いて転がしたあと、
ぱっと顔を上げる。


藤澤涼架
……わかったあ
藤澤涼架
ありがとね!
──
あ、は、はい!

帰り大丈夫すか?
傘いりませんか_______…





そう声掛けた滉斗の友人の声は、

藤澤先輩には
届いていないみたいだった。





ドアが、
入室時と同じように
ぴしゃんと冷たく閉まる。














藤澤涼架
…………"若井"、くん


また藤澤先輩が可愛く笑って、

そうくりかえす。





両手を後ろで組んで、
渡り廊下を歩く。




藤澤涼架
……もーときっ

そうひとりで呟いて、

藤澤先輩が横目でちらっと見たところ。





そこは、



______はじめて"若井"と出会った曲がり角で。






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