ザ────────ッッ…………ッ
冷たい大粒の雨が、
ざあざあ窓の外で降っている。
滉斗はちょっとだけ "大森" の単語に反応して、
ぱっと顔を上げる。
先生に頼まれた資料をとんとんと揃える。
たいへんだと言ったら
友人ふたりも手伝ってくれた。
…………まあネカフェで元貴を誘うだけ誘って
まったく手につけてないだけなんだけど。
向かい合って取り組む滉斗は
手元を覗き込む。
滉斗からは
素っ頓狂な声が上がって、
…………咄嗟に肩をひっつかむ。
けろっとした顔なりで、
また椅子をギコギコ鳴らしだす。
いや恥ずかし…………
どんな聞き間違いだよ….?
びっくりして顔が赤くなった滉斗は
物笑いされる。
_______キスした?笑 もうやった?!?
この時間はとりあえずイジられ続くと
確信した滉斗は、
むす、と拗ねては
無理やり課題を済ませにかかる。
________…ウ゛ゥ゛ー…ッ….
……あ、
噂をすれば。
………やべー……ニヤけてた…
スマホをポケットに突っ込む。
きっと元貴が居る玄関へ、
保健室から取ったタオルを持ってむかうことにした。
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外は昼間なのに暗い。
廊下はやっぱりちょっと涼しすぎる。
雨音が響くなか滉斗は、
真っ白のタオルを抱えて玄関に行く。
……………タオル、ってことは、
雨に降られて濡れてんのか……
また見れるんだ。
元貴の見たことないかお。
____ふいに、"あのとき"の寝顔が脳裏に浮かぶ。
……無防備すぎて。
あのこてんと寝落ちした
可愛い横顔。
女の子みたいに淡麗な顔立ちなのに、
たまに揶揄ってきて。
若井だから見られてもいいか、みたいな。
そんなコト思って…くれてたり……
距離が縮まったと思ってもいいのか……?
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バスタオルを両手に広げて、
滉斗が眉尻を下げて苦笑する。
髪の毛が濡れてぺたんとなっている。
元貴は、
手の甲で顎につたう水滴を拭う。
揶揄われて、
う、とくやしそうにする。
ばふん。
視界がまっしろになる。
わしゃわしゃ、とタオルで
濡れた元貴の髪を拭く。
うーーん、とされるがままの元貴を眺めながら
考える滉斗。
え、と声を漏らして
ぱっと目線を落とすと、
………口元をタオルで隠して、
上目遣いになり顔を赤くする元貴。
両手を上げて、
ば、と離れる。
吃驚して元貴を見ると、
困ったみたいに照れて笑われる。
…………自惚れるなって思ったそばから……
引かれてないといいけど……
ぎゅ、ぎゅ、とびしょびしょの制服を握る。
______透けて見える、鎖骨と腹のライン。
滉斗は見ないように
必死に視線を飛ばしながら話す。
元貴は首元が濡れてきもちわるいのか、
ボタンを外して
ぱたぱた乾かしだす。
・・・・・
背中を押してベットに連れて行き、
シャッとカーテンを閉める。
………よかった、バスタオル多めにあって。
制服乾くまで
くるまってればいいし。
ピチャ、…………ッ……
不意に、
水が滴り落ちる音。
………今、カーテン越しで脱いでんのか。
しゅる、っ………ッ
きっと、制服を脱いだんだろう。
服が擦れる音と、
ばさりと床に落ちる音がする。
背中越し、
"脱いで着替えている"音を感じながら
滉斗はその場にしゃがみこんで
顔を腕に伏せる。
…………下心がありすぎる。
落ち着け、
友達として距離をつめていって、
それで…………
_________あの透けてた格好。
いや待てよ。
それはそれとして……
もうちょっとだけ
見とくのもアリだったんじゃ………
意外としっかりしてた腹回り。
ぐっと浮かんでる鎖骨と、喉仏________……
ビクッと肩を跳ねさせる。
……元貴が呼んでいたのに気付く。
……つる、ッ…!!
着替えていた、ベットの場所へ
踏み込んだその、
_________瞬間。
滉斗がすべってつまづいた。
ドン、ッッ゛ッ………ッ
手の行き先を失くした滉斗は、
そのままベットに向かって元貴ごと
前倒れになる。
ぱさ、と後ろで
元貴の手から離されて落ちた制服の落下音。
両手を突いて、
体重でベットが沈む。
________…元貴の白い太腿と、ほそい腰。
裸体に、
タオルだけ被せて隠されている状態。
元貴の熱い体温が、
肌に触れてつたわってくる。
四つん這いで、捕えている状態。
ゴクン゛、ッッッ……
滉斗の喉仏が音を鳴らす。
っ………はやく、退かなきゃ……………………
ちょっと手を動かすと、
びくん、と元貴は反応した。
親指で、元貴の前髪にふれる。
桜桃色に頬を赤くして、
元貴がぐらぐら瞳を揺らす。
…………それから元貴は、
滉斗の鼻先で目をぎゅううと瞑る。
自惚れちゃダメだってわかってんのに。
落ち着かなきゃいけなくて、
裸なのも……事故で、
どれもこれも事故で……………………
目の前で、覚悟したみたいに瞳をつぶる、
_______俺の、大好きで愛おしい、
………可愛い元貴のかお。
キシ、…………ッ゛………ッッ
ベットの軋む音だけが、
静寂に響く。
_________期待するだけ、
無駄なの、に……………
…………?
_________え、
あれ……………あつくて………
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ガラガラガラ……ッ
教室のドアを後方で閉めながら、
にへ、と首を傾けて笑う。
ちょっとだけ教室内を見渡すと、
…………きゅっと目を細めて訊く。
_______さっきまで
コンビニに買い出し行ってくれてて…
好青年の笑顔を浮かべて、
滉斗の友人は言う。
……涼架は、あーね、と軽く少し返事した後、
俯いて顔が見えなくなる。
_______ほら、あいつ作曲…みたいなさ。
そんなカンジで関わるんじゃね?
もう片方の友人が
談笑する。
先輩は、
ちょっとだけこわかった。
答えて、いいからって、
ふわふわしてるいつもとは違う、
問答無用みたいな
雰囲気を纏って。
藤澤先輩は、
それをよく聞いて転がしたあと、
ぱっと顔を上げる。
帰り大丈夫すか?
傘いりませんか_______…
そう声掛けた滉斗の友人の声は、
藤澤先輩には
届いていないみたいだった。
ドアが、
入室時と同じように
ぴしゃんと冷たく閉まる。
また藤澤先輩が可愛く笑って、
そうくりかえす。
両手を後ろで組んで、
渡り廊下を歩く。
そうひとりで呟いて、
藤澤先輩が横目でちらっと見たところ。
そこは、
______はじめて"若井"と出会った曲がり角で。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!