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第1話

出逢い
4,108
2025/02/24 09:14 更新


_________今日こそ。


絶対に連絡先を
繋いでやるんだ。




=================================






──
ねね、数学IIの課題やった?
──
は、やべぇ………やってね
──
何やってんの、今日の授業1限から
アイツ担当だよ⁉︎
──
うわー終わったね、笑
──
頼む…………ッッ 今度奢るから見せろ!


がやがや色んな声が飛び交うなか、
元貴は身を屈めてバッグを肩に抱きしめて
すぐ席にいく。


……………誰か座ってる。



大森元貴
あの、ちょっとだけ退けてほしくって…

足を交差させて組み、
堂々たる姿勢で元貴の席に座っている男子。



──
?、っあごめ、大森くん邪魔だよね

がたん、と音を立てて椅子から立ち上がる。

い゛って、と一瞬しゃがむ。

だっさお前、なにしてんだよと
笑い声が上がる。

大森元貴
………ありがと

…………………これだから、
きらきらした人たちは好きじゃない。



元貴は口元をきゅっと結んで、
そのまま座る。



なんとなく男子達が向かったさきから
視線を感じた気がして、
意識をちょっとだけ向けてみる。



えと、大森くんだっけ………?
あの子、ほら襟足の
あぁ゛ー……ったしかそんな名前
暗いよねぇ…なんか曲?とか
作ってるらしいし
──
ん?なになに?何の話?
あんな過ごし方で楽しいのかなって、笑
わ、………んね、聞こえるからッ





………………………っ……



_________決めた。


今日はもう寄り道しないで早く帰ろう。
渡り廊下・・・・になんか、とどまらずに。


元貴は1人でそう決断し、
長い長い今日がはじまると考えて一気に倦怠感に
見舞われた。




なんで構うかなぁ………………

どうでもいいなら放って置いてほしい。
期待だけさせるだけさせないで。



________だから今日も元貴は、

いっさい自分語りなんてしないで、
関わりを持たないで、
" 孤独 "を謳歌する。


でも、
既に
心がぽっきり折れてしまった元貴にも………………



==================================


Teacher
すまん大森、これやっといてくれっ
大森元貴
は、ぇ……………?

どさっ。

咄嗟に広げた腕に乗っけられたのは
大量の紙と資料。

大森元貴
なんですか、これ…
元貴が顔をしかめる。

Teacher
ふ、そんな嫌そうな顔しないでくれ
Teacher
皆、部活だの遊びだので居なくてなぁ
お前なら任せられるだろと思、ッて!

……………追加で何枚か。


大森元貴
えちょ、待ってくださいよっ

元貴が
資料でみえなくなった顔を出そうと
一生懸命首をのばす。


呼び止めるけれど、

もうすでに先生は後ろをくるりと向いて

じゃあ頼んだな、とポッケに手を突っ込み、
後方に手を軽く振っていた。
大森元貴
〰︎〰︎〰︎ッッッ…………

………せっかく早帰りだと思ってたのに、

こんなのじゃ_______…

大森元貴
………視聴覚、いこ

もうどうにでもなれ。

急ぎ足で作業部屋の教室へと足をはこぶ事にした。








──
ん?だいじょう、ぶ?
大森元貴
は、ぅ゛…っ?
──
わわわ、めっちゃ重そ

ちょっと待ってよ、と軽く言ったその低い声は
下から持ち上げて助けてくれる。

_____その時に当たった手の体温があつくて。



手なんて触れられる機会のない元貴は、

ざわ、と背中に違和感と心地よさのようなものが
昇る感覚がする。



大森元貴
あ、ありがとうございま……す…

________優しい。

ぱっと脳裏に浮かんだ言葉がこれで、

普段どれだけ優しさに触れてないんだと
自分の中で苦笑する。


──
や、全然全然!
作業もよかったら手伝うし….ッ
──
っ、よっしょ、

それは大丈夫です、さすがに悪いので。


………………………


へらりといつもみたいに笑って返そうとした元貴は、
へんな違和感を感じてゆっくり目を開けてみる。


_________……?


大森元貴
は、ぇ゛………ッ、⁇若井さ、ん、…ッ⁈
若井滉斗
うぉ、なになに…若井だよ…っ

ちょっとだけ後退して、
胸の前に手を上げる_________
_________その子。


それは、
完全に眺め慣れてる顔で、
声で、髪型で。


飽きなんて無いぐらい見つめて追いかけている人が、
そこには居て。


きょとんとしたみたいな、
戸惑ったみたいな、その表情…………





大森元貴
あの、ぁ………えっと、僕っ!!

…………………なんて言ったら良い!?


というか_______________…

どんな感情を、抱いて…?


憧れ?顔が好み?性格が好き?仲良くなりたい?




……………………あ……


恋愛、ではなくって。
_________男だし、僕は。





じゃあこれって、
なに_____________⁇





前を見ると、
若井さんが困ったみたいに
眉尻をかくんと下げて笑っている。

片方だけきゅっと吊り上げられた口角が、
印象的で、すごく……………


若井滉斗
あの、同級生だよね…?

ぶんぶんと首を縦にふる元貴。

若井くんは、
ふ、と小さく微笑う。




若井滉斗
じゃあ、とりあえず_________

……………………いや、だ。

大森元貴
い、行かないでください……ッ!!
若井滉斗
ん、行かない行かないっ

くいくいっと目の前の視聴覚室を
顎で指した。


それから、
急に必死に引き留めにかかる
元貴を見てまた微笑む。



若井滉斗
作業、一緒にしよ?


こてんと首を傾けて、
元貴を覗き込むみたいにして提案してくる。

髪にかかった前髪から、
すうと良い匂いがする。



大森元貴
_________ぇ


___________……一緒に、さぎょう?


待って、


確かにそう言って……………………?!!?



若井滉斗
んじゃあーっ、決まりね!


_________いつのまにか決まっていて。



するりと腕を背中にまわされて、
押し込まれるみたいにして教室に入った。



==================================




………ただひたすらに、

書いては消して、
考えて顔をしかめてを繰り返す若井くん。


それをずうっと、横目でばれないように見つめる。




グレー掛かった髪色は透き通っていて、
自然なセンターパートが、重めな前髪。


………_________ほんとうに。




若井滉斗
この統計がー…?
じゅー、にじゅー、さんじゅ………
若井滉斗
お化け屋敷希望が160票でー…ぇ、と


その細くて綺麗な手に握られている、
短すぎる鉛筆さえも
かっこよく見えてくるから…ふしぎ。



若井滉斗
……やってるぅ、ちゃんと?
大森元貴
、!?ん!! や、ってるよッ

かあ、と顔を染めていって
ばっちり合った瞳を慌てて逸らす。




若井滉斗
…………てかもう文化祭、か
適当に上にのっかっていた
プリントをめくる。
大森元貴
ぶん、かさい
若井滉斗
んね、めちゃめちゃ早いんだけど

劇団部の発表会。
出し物による出店。
大きく掲げる旗。
描きたくる黒板と、有志ステージ。

大量にそのアンケート結果がぎちぎちに
詰まっていて。
若井滉斗
これぜんぶ1人でしようとしてんの
やばいでしょっ
うわあ、と嫌そうな顔をして
はにかんで笑いかける。


まあふたりでするんだから終わるでしょ、と
楽観的な呟きもしながら。




……………大丈夫。

きっと聞ける。


2人っきりの居残り作業。

ここまで条件が揃って
聞かないわけがない。


だから一旦、
うるさすぎる心臓を押し込めるみたいに
胸元を握りしめて_________…


大森元貴
ッあ、あの…!
元貴が
服の裾を握りしめて、
その愛らしい口を開く。



若井滉斗
ん?どした?

ぱちっ。

聞き返して、
口をむすんで至近距離までぐっと近づかれる。


大森元貴
っぁ゛ぐ、…
若井滉斗
どし_________
大森元貴
手伝ってくれて
ありがとうございました……ッッッ‼︎
若井滉斗
!?わ、ちょ……‼︎!



_______バゴンッッッ、ガタガタ…ッ

大森元貴
ぃ゛でっ、
若井滉斗
んね、ぶつかってるじゃんかっ

すねをぶつけて痛みがはしる。

でもそんなの、
ぜんぜんどうでもよかった。






か、かっこよすぎない………………?、?!!!??!



ずうっと、
" あの時 "から

人に触れるのを辞めた俺が、

一瞬で吸い込まれるみたいにして見たそのひと。



その人、『 若井滉斗 』________は、

想い続けて死ぬほど眺めてきた高校生活なのに、

遥かにかっこよくて、可愛くて、表情豊かで。



喉がごく、と音を鳴らす気がした。





……………こんなの………………‼︎

聞けるわけないでしょ………………!?






若井滉斗
急に立ち上がってどうし ─────
大森元貴
〰︎〰︎ッ、ば、ばいばいっ!

ばっと顔を上げて宣言して
スクールバックを引っ張りだした元貴。


______ぶわ……、っ

どんどん顔が赤くなっていく。






_________そんな元貴を、

滉斗は瞳孔をちいさくして、
驚いたみたいな表情を浮かべて、見て。

若井滉斗
待゛ッ゛……


ガラガラガラ、…バタンッッッ゛



一応、迷惑はかけないようにの配慮で
自分担当のプリントだけはごっそり持って帰って。



呼び止めに伸ばして空を切る手を、
滉斗はぎゅっと握る。



・・・・・・






若井滉斗
あーぁ゛ー……………


……………ごつん。


元貴が慌てて飛び出していって無造作に倒された
椅子を、机につっぷしながら眺める。



おでこがプリントに当たって
ちょっとだけ痛い。


じゅあ、と胸のどこかが熱くなってくる。




_________…………、?







届かない。届かない、
だけど、



滉斗は唸ってからひとり、
静かになった教室でつぶやいてみて。






若井滉斗
言おうとしてたのになー………………っ

下唇を噛むと、
やっと現実に戻って来れる気になれた。




=================================








大森元貴
〰︎〰︎〰︎わぁぁぁ゛……ッッ!!!!

自室に飛び込むと、

ぼすんとベットにダイブした。



枕に顔面をつっこんで、
やるせなくなって叫んでみる。


大森元貴
ぜったい名前すら知られてないのに……


_________いや、

若井くんは
なんなら顔もはじめてとかかもしれない。

……………名前以前に。




……こんなモブ、
きらきらしたあの子が気にしてるわけなくて。



ルックスもかんぺきで、
登校しない日なんてなくって、
優しくて気遣いできて。



_______明らかに住む世界が違う。


そんなのわかってる。



_________でも。

なんにもなかった僕を
救ってくれたのは若井くん。


" あの出来事 "があってから………………



胸が切なくなってくるしくなって、
考えるのをやめた。






大森元貴
逃げるとか………何してんだ、俺ぇ゛…

_________くるしいなあ。

なんだ、これ……………????


恋心じゃないなら、

なんなんだろ、…………………………………?




何かの間違いでいいから、
若井くんは僕のことを想ったり_________...












だん、……………ッッッ‼︎


静かな廊下に、
壁に腕をつく音が響きわたる。





ぎゅうっと、
制服ごしに
心臓を抱き締めるみたいにして掴む。



_________ぱっと、顔を上げた時の顔。



顔赤くして、
可愛くて、
でもなんだかこわれてしまいそうで………………




若井滉斗
あの顔は…………ッ、反則だろ…?

いつも見慣れて、

これ・・が、
バレないようにしてる筈なのに_________






あんな、状況、




若井滉斗
もときのばか…………………っ




_________これから始まるのは、


……………………新しく現れるあの子との、


溺愛とりあいっこ。

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