_________今日こそ。
絶対に連絡先を
繋いでやるんだ。
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がやがや色んな声が飛び交うなか、
元貴は身を屈めてバッグを肩に抱きしめて
すぐ席にいく。
……………誰か座ってる。
足を交差させて組み、
堂々たる姿勢で元貴の席に座っている男子。
がたん、と音を立てて椅子から立ち上がる。
い゛って、と一瞬しゃがむ。
だっさお前、なにしてんだよと
笑い声が上がる。
…………………これだから、
きらきらした人たちは好きじゃない。
元貴は口元をきゅっと結んで、
そのまま座る。
なんとなく男子達が向かったさきから
視線を感じた気がして、
意識をちょっとだけ向けてみる。
………………………っ……
_________決めた。
今日はもう寄り道しないで早く帰ろう。
渡り廊下になんか、とどまらずに。
元貴は1人でそう決断し、
長い長い今日がはじまると考えて一気に倦怠感に
見舞われた。
なんで構うかなぁ………………
どうでもいいなら放って置いてほしい。
期待だけさせるだけさせないで。
________だから今日も元貴は、
いっさい自分語りなんてしないで、
関わりを持たないで、
" 孤独 "を謳歌する。
でも、
既に
心がぽっきり折れてしまった元貴にも………………
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どさっ。
咄嗟に広げた腕に乗っけられたのは
大量の紙と資料。
元貴が顔をしかめる。
……………追加で何枚か。
元貴が
資料でみえなくなった顔を出そうと
一生懸命首をのばす。
呼び止めるけれど、
もうすでに先生は後ろをくるりと向いて
じゃあ頼んだな、とポッケに手を突っ込み、
後方に手を軽く振っていた。
………せっかく早帰りだと思ってたのに、
こんなのじゃ_______…
もうどうにでもなれ。
急ぎ足で作業部屋の教室へと足をはこぶ事にした。
ちょっと待ってよ、と軽く言ったその低い声は
下から持ち上げて助けてくれる。
_____その時に当たった手の体温があつくて。
手なんて触れられる機会のない元貴は、
ざわ、と背中に違和感と心地よさのようなものが
昇る感覚がする。
________優しい。
ぱっと脳裏に浮かんだ言葉がこれで、
普段どれだけ優しさに触れてないんだと
自分の中で苦笑する。
それは大丈夫です、さすがに悪いので。
………………………
へらりといつもみたいに笑って返そうとした元貴は、
へんな違和感を感じてゆっくり目を開けてみる。
_________……?
ちょっとだけ後退して、
胸の前に手を上げる_________
_________その子。
それは、
完全に眺め慣れてる顔で、
声で、髪型で。
飽きなんて無いぐらい見つめて追いかけている人が、
そこには居て。
きょとんとしたみたいな、
戸惑ったみたいな、その表情…………
…………………なんて言ったら良い!?
というか_______________…
どんな感情を、抱いて…?
憧れ?顔が好み?性格が好き?仲良くなりたい?
……………………あ……
恋愛、ではなくって。
_________男だし、僕は。
じゃあこれって、
なに_____________⁇
前を見ると、
若井さんが困ったみたいに
眉尻をかくんと下げて笑っている。
片方だけきゅっと吊り上げられた口角が、
印象的で、すごく……………
ぶんぶんと首を縦にふる元貴。
若井くんは、
ふ、と小さく微笑う。
……………………いや、だ。
くいくいっと目の前の視聴覚室を
顎で指した。
それから、
急に必死に引き留めにかかる
元貴を見てまた微笑む。
こてんと首を傾けて、
元貴を覗き込むみたいにして提案してくる。
髪にかかった前髪から、
すうと良い匂いがする。
___________……一緒に、さぎょう?
待って、
確かにそう言って……………………?!!?
_________いつのまにか決まっていて。
するりと腕を背中にまわされて、
押し込まれるみたいにして教室に入った。
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………ただひたすらに、
書いては消して、
考えて顔をしかめてを繰り返す若井くん。
それをずうっと、横目でばれないように見つめる。
グレー掛かった髪色は透き通っていて、
自然なセンターパートが、重めな前髪。
………_________ほんとうに。
その細くて綺麗な手に握られている、
短すぎる鉛筆さえも
かっこよく見えてくるから…ふしぎ。
かあ、と顔を染めていって
ばっちり合った瞳を慌てて逸らす。
適当に上にのっかっていた
プリントをめくる。
劇団部の発表会。
出し物による出店。
大きく掲げる旗。
描きたくる黒板と、有志ステージ。
大量にそのアンケート結果がぎちぎちに
詰まっていて。
うわあ、と嫌そうな顔をして
はにかんで笑いかける。
まあふたりでするんだから終わるでしょ、と
楽観的な呟きもしながら。
……………大丈夫。
きっと聞ける。
2人っきりの居残り作業。
ここまで条件が揃って
聞かないわけがない。
だから一旦、
うるさすぎる心臓を押し込めるみたいに
胸元を握りしめて_________…
元貴が
服の裾を握りしめて、
その愛らしい口を開く。
ぱちっ。
聞き返して、
口をむすんで至近距離までぐっと近づかれる。
_______バゴンッッッ、ガタガタ…ッ
脛をぶつけて痛みがはしる。
でもそんなの、
ぜんぜんどうでもよかった。
か、かっこよすぎない………………?、?!!!??!
ずうっと、
" あの時 "から
人に触れるのを辞めた俺が、
一瞬で吸い込まれるみたいにして見たそのひと。
その人、『 若井滉斗 』________は、
想い続けて死ぬほど眺めてきた高校生活なのに、
遥かにかっこよくて、可愛くて、表情豊かで。
喉がごく、と音を鳴らす気がした。
……………こんなの………………‼︎
聞けるわけないでしょ………………!?
ばっと顔を上げて宣言して
スクールバックを引っ張りだした元貴。
______ぶわ……、っ
どんどん顔が赤くなっていく。
_________そんな元貴を、
滉斗は瞳孔をちいさくして、
驚いたみたいな表情を浮かべて、見て。
ガラガラガラ、…バタンッッッ゛
一応、迷惑はかけないようにの配慮で
自分担当のプリントだけはごっそり持って帰って。
呼び止めに伸ばして空を切る手を、
滉斗はぎゅっと握る。
・・・・・・
……………ごつん。
元貴が慌てて飛び出していって無造作に倒された
椅子を、机につっぷしながら眺める。
おでこがプリントに当たって
ちょっとだけ痛い。
じゅあ、と胸のどこかが熱くなってくる。
_________…………、?
届かない。届かない、
だけど、
滉斗は唸ってからひとり、
静かになった教室でつぶやいてみて。
下唇を噛むと、
やっと現実に戻って来れる気になれた。
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自室に飛び込むと、
ぼすんとベットにダイブした。
枕に顔面をつっこんで、
やるせなくなって叫んでみる。
_________いや、
若井くんは
なんなら顔もはじめてとかかもしれない。
……………名前以前に。
……こんなモブ、
きらきらしたあの子が気にしてるわけなくて。
ルックスもかんぺきで、
登校しない日なんてなくって、
優しくて気遣いできて。
_______明らかに住む世界が違う。
そんなのわかってる。
_________でも。
なんにもなかった僕を
救ってくれたのは若井くん。
" あの出来事 "があってから………………
胸が切なくなってくるしくなって、
考えるのをやめた。
_________くるしいなあ。
なんだ、これ……………????
恋心じゃないなら、
なんなんだろ、…………………………………?
何かの間違いでいいから、
若井くんは僕のことを想ったり_________...
だん、……………ッッッ‼︎
静かな廊下に、
壁に腕をつく音が響きわたる。
ぎゅうっと、
制服ごしに
心臓を抱き締めるみたいにして掴む。
_________ぱっと、顔を上げた時の顔。
顔赤くして、
可愛くて、
でもなんだかこわれてしまいそうで………………
いつも見慣れて、
これが、
バレないようにしてる筈なのに_________
あんな、状況、
_________これから始まるのは、
……………………新しく現れるあの子との、
溺愛とりあいっこ。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。