ちょ______っ…!!
若井くんが、なんかへんだ……っ
" 認知すらされていない " 俺なんかに。
_________映画終わり、
言葉責めならぬ呼び方責めをされてる
真っ只中。
================================
俺も見なきゃだから、と咄嗟にこじつけた理由で
一緒に見ることになった映画。
初めてまともに見る元貴の私服。
それを直視できないながらも館内に入る。
何故かぜんぜん合わせてくれない
その愛らしい瞳。
跳ねた襟足が目立つ後頭部を
コーラ片手に眺めながら歩く。
黙りこくったまま、ふたりが座ると、
力んだ元貴が声を上げる。
_______遮られる。
ぱっと滉斗が左側の席の元貴を見ると、
座った自身の膝に両手を置き
ぎゅううと握りしめている。
……ちらっと見えるほっぺたが赤い。
ばっとこっちを急に向いてきて、
眉毛をかくんと下げると慌てて否定する。
_________そんなに嫌かな?
もしかして、
やばいくらい俺…嫌われてる?
隣ですぐ俯いて
長く息を吐いている元貴が気になる。
そうこうしているうちに、真っ暗になりだす。
………なんで。
こんな、ふたりきりなんて………チャンスでしか無いのに。
攻められない自分がいやになる。
_____________その瞬間。
元貴のロック画面に表示された、
通知バーが目に飛び込む。
滉斗がきゅっ、とその涼しげな目元を細める。
_______え、なに、っ?
そんな戸惑う元貴に、
滉斗はへらりと笑ってみせる。
予習、するんでしょ?
….余裕げにそう放った滉斗も。
頭の中はパンクしそうなくらい、元貴のことで
溢れかえっていて。
--------------------------------------------------------
バゴンッッッ゛!!!!! グチャ…ッ、
心臓に響く大きい音。
生々しい描写。
ホラー耐性があって、好んで見ている
滉斗ですらちょっとだけ驚く。
………こんなとき、
元貴、は……………?
ぴく….っ
微かに、
肘掛けに置かれている
元貴の綺麗なちいさな手が反応してビクつく。
バレないように顔をみると
眉毛をぐっと寄せて下唇を噛み締めていた。
……………や、耐えてんのかわいすぎない…?
顔をぐっと寄せてみて、
囁くように滉斗は訊く。
至近距離になって。
目を見開いたあと、斜め下をみて小さく言った。
_________ほら、ね。
ぶわあ、と頬を真っ赤に染めてゆく。
拗ねたみたいに、説得力皆無のその顔で
スクリーンへ集中の矛先を戻す。
…………横顔が可愛い。
つんと立った鼻筋と口先。
集中している瞳が愛らしい。
『ペアダンスがあるので相手を見つけておくように』
_________元貴は。
…誰と組むんだろう?
『そういや俺こないだ女子といるの見たわ』
______その子と組むの?
無意識に、
滉斗の華奢な手は元貴の手に伸びる。
握って………抱きしめたいよ。
ぎゅううって胸が締められる。
喉元が熱くなる。
_________君の隣は俺だけでいいのに。
勢いあまって、肘掛けからすべり落ちる。
ふわあと元貴の髪から甘い香りがする。
これに酔わされているんじゃないかと、
そう錯覚させられるくらい。
………惚れ薬、みたいだな。
エンディングが終了を迎え、
だんだん明るくなっていく。
_________このふたりの時間も、
終わりかあ。
前に掛けたカバンをとっていた元貴は、
どさっと落とした。
珍しいことを聞いたみたいな、
素っ頓狂な声を元貴は上げる。
今度は滉斗が抜けた声を漏らした。
知ってるもなにも。
俺はずうっと、あの時から_______________________
映画館の椅子に、
元貴は崩れ落ちる。
ぐい、ッッッ゛!!
滉斗は元貴の二の腕を引っ掴むと、
強引に惹き寄せた。
あんなに賑やかだったここは、
もう静寂に包まれている。
元貴とふたり、
…………………息遣いが聞こえる至近距離。
抱き寄せるみたいにされて。
………体温が伝わって身体の芯が熱くなってくる。
手の甲で顔を隠す。
それを滉斗は片方の手で振り払って退ける。
前髪がかかって表情がよく見えない。
こてんと首を傾けて、
滉斗は近付く。
正直そう言い攻める滉斗も、
__________限界で。
眼の奥がじわあと熱くなっていくのがわかる。
滉斗は、きょとんと瞳孔を縮めてから、
きゅうっと目を細めて、口角を上げてみせた。
…………いじわるな笑いかた。
それから、滉斗は
いたずらっぽく口元を結んではにかんだ。
滉斗は元貴の熱くなった肩から腕を解き、
すうと手を伸ばす。
…びくん、ッ
元貴が急な動きにまた反応する。
元貴はぶわわ、とまた赤面させて顔を伏せる。
滉斗が元貴の可愛く跳ねた襟足を
ぴんと指先で弄ぶ。
_________それから。
_______滉斗も、
髪で隠れたなかで、
その淡麗な顔を照れさせて
真っ赤に赤面させていた。
目を合わせられなくなって、
照れながら顔をそむけるふたり。
一旦、外に出ることになった。
=================================
ちょっと見てくるね、と声を掛けて
元貴は1人になり震えるスマホを確認する。
そこには、
" 藤澤涼架 " の表示。
元貴は躊躇いながらも、
手に取って_________……
・・・・・・・・
ポケット片手に待つ滉斗の元へ、元貴が駆け寄る。
家の人からの連絡だと思ったのか、
すんなり承諾してくれる。
ばくんと心臓が跳ねる。
_______きゅうな名前呼び、やめてよぉ…っ
だんだんまた顔を赤くしていく元貴を見て、
滉斗は鼻先がつんと痛くなる。
…………じゃあ……
_______聞けなかったなぁ。
ほんとにあの女子とペア組みたいのかって。
…………まあ、でも。
滉斗はある決断をした。
===================================
今部屋?と訊ねられ肯定する。
着信が何件か溜まっており、
掛け直すと帰ってからまた電話してよと言われた。
そして今、
誰もが推す可愛い先輩と話すことになって。
へらりと仕方ないみたいに笑う。
________そりゃそうだ。
こんなルックスで、
しかもふわふわした優しい雰囲気で、
誰にも変わらず接して………
てことは、
きっと電話なんかも慣れてるはず。
……すぐ連絡先交換まで持っていってくれたし。
元貴。
その自然な呼称に
一瞬、ばくばく、と心臓に動悸がおきる。
え………………?
藤澤先輩が言うには、
あの子は狙っている男子も多く
トップレベルの人気を誇る女子らしい。
藤澤先輩の周りの何人かも告白しては
玉砕してるだとか。
あはは、ほんとに知らなかったんだ、と笑う涼架。
________がんばってこうして
会話までこじつけたけれど。
スマホを握る手は力が入り、落ち着いていなくて。
……思い切って口を開く。
せっかくのチャンスだから。
______む。
また揶揄われる。先輩が楽しそうだからいいけれど。
涼架は思い切って、
口から転がすことにした。
かひゅ、と喉が音を立てて空を切る。
……いや。よくないけど。
自分の言った言葉を反芻してみると、
一気に胸元がくるしくなって熱くなる。
元貴は一瞬、
_______『あの女子』が脳内によぎった。
初々しい様子で話しかけた雰囲気。
確かに圧倒的に可愛くて、
今までみた中でいちばんだった。
それと同時に、
さっきまで会って触れていた滉斗が脳裏に浮かぶ。
あのはにかんだ顔が、
笑い方が、低い甘い声が………俺は。
…………いいの、っ!??!!
あのカワイイ子じゃなくて。
男なのに、俺_________…
______好きな子とか…居ないんだろうか。
考えればそれほど、ぶわわと浮かんでくる。
その瞳をぐらぐら揺らしながらも、
涼架は安堵して。
………………それから、急に、
目を細めると低く笑った。
あーあー、と落ち込んでみせる、
俺になぜか甘くて可愛い声色を送ってくる、
せんぱい。
勢いで返事してしまう。
涼架は電話越し、
頬づえをついて微笑ってみせる。
その柔らかい髪がふらりと揺れている。
元貴を、
________揶揄いたくなった。
_______じゃあまたね、っ
その言葉を最後に、
通話は切れた。
充電が無いことに気づき、手を伸ばして線を取る。
ぷす、…っ
ふぉん、と音がなり、
1人の部屋に響いて充電される。
_______ぼふん。
突如、顔をまっかにして、
ベットに涼架が顔を埋める。
からかってみたくなって、
_____いじわるしたらどんな反応するのかな?
『………からかわないでっ』
ちょっとだけ拗ねてみせて、
ふくれたあの声色。
一瞬だけ緊張が解けて、
タメ口になった口調。
………ダメだ。
突然出会った後輩くんが、
可愛すぎる……っ………













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。