「…おはよう」
教室の重い扉を開け、いつものように空気に向かって挨拶をした。すぐにクスクスと笑い声がする。オレは学校がキライだ。
ドンッ
「やめろよ」
「うっわ妖怪がこっち睨んだ‼︎呪われるぅ!」
またこいつか。オレを妖怪みたいだと揶揄してくる。……キライだ。
「ねぇずっと思ってたんだけど、なんで"妖怪"?」
オレに興味ないクセに余計なこと聞くんじゃねぇよ。
「あぁ、こいつ妖怪みたいじゃんなんかヒョロっこいし、目とか口とかなんてゆーか変じゃんか」
「えーひどーいクスクス…でもわかるかも〜」
「こいつ無駄にデケェしな」
…おまえらの評価なんか知らないし興味もないんだよ。それにオレは父さん似なんだ。父さんはすっごいかっこいいから、だから別におまえらになんて思われたって良い______
「そーいえば、妖怪の父ちゃんも変だよなぁ」
________は?
「あーそれわかるわぁめっちゃ妖怪ぽいわ」
おまえら__
「なんか妖怪がでっかくなったかんじ?」
「リアル妖怪じゃーん」
「え、なんかヤダ〜」
「私もずっと思ってたぁ」
「私も私も!なんかキモチワル…」
バンッ
「ッ黙れよ‼︎」
「……は、は?なにマジになってんの?」
「…うわこわ〜妖怪がキレた〜」
…まだ黙らねぇのかよ。
「オレの父さんは、カッコいい‼︎‼︎」
おまえらがバカにしたオレの父ちゃんは___
「お前らの父親よりもカッコいい‼︎バレーがすっごい上手いんだ!春高にだって行ったし、父さんのブロックは絶対破れないんだ‼︎」
「は?なに嘘ついちゃってんの?」
「嘘なんておまえら相手につかねぇよ」
「そんなつまんねー嘘つくから‼︎オレらと一緒にバレーできねーんじゃねーの⁉︎バッカみてぇ!嘘つきが‼︎」
「…違うだろ。」
そうだ。おまえがオレとバレーしないのは___
「オレよりバレーがヘタだから。」
「____は?」
「オレとバレーしないのはさ、一回だけオレとバレーしたとき、オレの方が上手かったからだろ?」
「ッ_____‼︎」
バキッ
「なぁなぁテンドーくん!バレーするって言ってたじゃん!」
「うん、するよ」
「マジか‼︎一緒にしねぇ⁉︎」
「…いいの?__する!」
「ねぇ今日もバレーしない?」
「あーテンドーくん……オレパスで」
「…わかった!」
「みんなは?しようよ!」
「オレらは___」
「みんなやらねーって!みんな行こ‼︎」
「……そっか」
「あ、今日はする?」
「いや、しない。」
「じゃあ明日とか__」
「おまえとはもう絶対しない。」
「………え?」
「そろそろうざいって気づけよ」
「あのさ……………」
「おまえ、バレー、テンドーくんとはしねーの?」
「…あいつうぜぇんだよまじで。毎日話しかけられてちょっとキモいわ」
「キモいって言っていーの?笑」
「二度と一緒にバレーはしねーからいーの!あいつマジでキモチワルいわ」
____オレは学校がキライだ。大キライだ。
でもほんとは_____
学校が好きになりたいだけなんだ。
ナカマが欲しいだけ、なんだけどな……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。