第2話

気まずい沈黙
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2021/07/06 11:10
乃木坂学園の芸能科に編入してから1週間が過ぎた。

クラスメイトとは少しずつ打ち解けてきたが、いまだに馴染めない女子が一人いた。

藤村 祐樹
あ、あの……齋藤さん
齋藤飛鳥
……なに?
隣の席の齋藤さんが、横目でちらりとオレを見る。
藤村 祐樹
今日、オレたち日直なんだって
齋藤飛鳥
そうなの?
藤村 祐樹
うん
齋藤飛鳥
……
齋藤さんは何も言わず、ため息で答えた。


その日の放課後、オレは齋藤さんと一緒に教室の掃除をした。
気まずい沈黙に耐えかねて、オレは彼女に話しかける。
藤村 祐樹
あ……そうだ。学級日誌まだ書いてなかった
齋藤飛鳥
もう書いておいた
藤村 祐樹
え、いつの間に…
齋藤飛鳥
次は忘れないでよ?
藤村 祐樹
うん。ありがとう
再び気まずい沈黙が続いた。
齋藤飛鳥
藤村くんもう帰ってもいいよ
藤村 祐樹
え?まだ終わってないよ
齋藤飛鳥
あとゴミ箱だけだから、私やる
僕は齋藤さんと一緒に帰るつもりだった
藤村 祐樹
(まだ、この間の件のこと引きずってるのかな…)
藤村 祐樹
あの時は本当に、たまたま同じ書店に行くつもりだったんだよ
齋藤飛鳥
ふうん
彼女は小さく頷いて、ゴミ袋を縛り始めた。
藤村 祐樹
(本当に信じてくれたのか、よく分からないなぁ…)
彼女と打ち解けるには、もう少し時間がかかりそう。
その後、オレは静かに教室を出た。






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