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第5話

叶わなかった恋心
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2021/06/08 15:50
 翌朝、いつものところへ行くと、莉奈の姿がなく、少し待ってみたが莉奈は来なかった。メールを送ってみるも、返信はなく、胸騒ぎがして、学校へ着くなり職員室へ向かった。先生に莉奈のことを聞き、頭が真っ白になった。
先生から聞かされたのは、昨日の夜遅くに体調が悪化し、今は集中治療室で眠ってるという内容だった。
別れた時はあんなに元気だったのに…なんで...。
そんなことが頭をよぎる。
『莉奈、大丈夫かな。きっと大丈夫だよね。すぐに目を覚ますよね。 』そんなことを思いながら、病院ソファーへ腰掛ける。
そこへ、莉奈の両親が。
「吉川悠真君ですよね。莉奈からもし、自分に何かあったら悠真君に渡してって手紙預かってます。」と莉奈の両親から手紙が渡された。
恐る恐るその手紙を開く。その手紙を読み、僕は涙を流した。
「この手紙を読んでるってことは、私に何かあったってことだよね。こんな形でごめんね。もっといっぱい話したかったし、もっと一緒にいたかった。私ね、入学してすぐの頃からずっと、悠真君のことが好きだったの。ずっと言えなくてごめんね。こんな形で言ってしまってごめんね。でも、本当に悠真君のことがずっと好きだったの。生まれつき心臓が悪くて、ずっと入退院を繰り返してて、高校生になってからやっと、普通に学校に行けるようになったの。その事がすごく嬉しかった。悠真君のこと、初めに話しかけたきっかけは先生に呼んできてって頼まれたからだった。でも、少し話して、この人は自分に自信が無い人なんだと思った。そう思うと、少しだけ、悠真君に興味を持った。それから毎日悠真君と一緒に学校へ行くようになって、すごく楽しかった。悠真君と話をする何気ない日常が何よりも幸せに感じた。悠真君はどう思ってくれてますか?本当に何も言えなくてごめんね。直接言えなくてごめんね。手紙でごめんね。悠真君、好きだよ。でも、悠真君にはこれからきっと素敵な人が現れるから、いつかいなくなっちゃう自分が悠真君に好きだなんて言えなかった。悠真君には、きっと体も丈夫で、素敵な人が現れるから。でも、出来たら、私の事、少しでもいいから思い出して欲しいな。今までありがとう。楽しかったよ。」
その手紙を読み終えると、莉奈が少し目を開け、「好きだよ。今までありがとう。」と言った。僕は泣きながら莉奈に「僕も好きだよ。今までありがとう。」と言った。その言葉を聞き、少し笑みを浮かべながらゆっくりと目を閉じ、そのまま息を引き取った。
そして、莉奈のお通夜、お葬式に参列し、今までのお礼を言った。
そして僕は「莉奈のことは一生忘れない。」と莉奈に心から誓った。

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