ある日、私は任務に出かけていた。
今日倒した鬼は山の中の村にいて、三体で群れていた。
少し血鬼術が厄介だったが、問題なく倒したのだった。
そういえば米が切れかけていたので買い足さないといけない、なんて考えながら山を下る途中、木の根につまづいて転んでしまった。
「いっ…た…」
立ち上がろうと足を立て力を入れた瞬間、激痛が走る。試しに脛の上あたりを叩いてみるとかなり響く。脛を折ったようだ。
落ちていた太めの枝を足に添え、師範のために持ち歩いている包帯で固定した。
右足を引きずりながらなんとか蝶屋敷に到着し、玄関に倒れ込んだ。
「どうなさいました?あれ、あなた?どうしたの!?」
「アオイ、少し手を貸してくれない?足を折ってしまって。」
「足が!?カナヲー!ちょっと来て!早く!」
ドダドダドタ、と足音がして、カナヲが走ってきた。
「あなた?こ、これどうしたの?」
「足が折れてるの!しのぶ様、今診察してる患者いないわよね?診察室まで運ぶから手伝って!」
「うん!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!