「師範、帰りました。晩御飯の支度しますね。」
返事がない。縁側で寝ているのか。それとも鍛錬か。
居間を覗くと、宇髄さんと師範が喋っていた。もうこの光景には慣れたから大丈夫だが、他の人がこの二人が喋っているのを見たら、喧嘩だと思うだろう。全般的に悪いのは、宇髄さんだ。ただでさえ沸点の低い師範を容赦なく煽る。師範も師範だ。聞き流せばいいものを。
「師範、宇髄さん、ただいま帰りました。夕飯の準備をして来ますので、くつろいでいてください。宇髄さん、夕飯はどうなさいます?」
「今から任務だから大丈夫だ、ありがとうな。」
「軽く何か食べます?」
「フグ刺し!」
「ないです。卵かけご飯でいいですか?」
「おう、ありがと。」
一般の方からすると卵かけご飯は軽食ではないのだろうが、私たちにとっては軽食なのである。実際、台所に置いてある皿や容器は、すべて標準より大きい。
鉢にご飯を盛り付け、生卵を二つ割り、少し味付けをする。宇髄さんはこの味が好きだ。ちなみに師範は少し甘い方が好き。
居間にそれを持って行って渡すと、「おー、これこれ。」と言って手を合わせ、食べ始めた。ほんの五分で食べ終わる宇髄さんに感心する。
宇髄さんは食べ終わるとご丁寧に器まで下げてくださって、上機嫌で任務へ向かっていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。