鴉が任務を告げにきた。三人の隊士との合同任務らしい。
あ、師範の晩御飯の用意忘れて来たなぁ、なんて考えながら目的の場所に着くとそれらしい三人の隊士がいた。
「こんにちは。」
「こんにちは!あなたさんですか?鴉から聞いています!」
気持ちの良い少年だ。額に傷がある。大きな箱を背負っていて中からは鬼の気配がする。
「ねぇ、鬼を捕まえてどうする気?なんで背負っているの?」
「これは妹なんです。鬼にはなってしまったけれど決して人は襲わないんです!」
「……そう。」
師範が聞いたらどんな顔をするだろう。そのうちきっと問題になる。
「ちょちょちょちょ炭治郎!?誰その美人?」
私が美人だ、なんて思ってはいないけれど周りを見渡しても女性は私一人。恐らく私のことだ。
「どうも。今日はよろしくね。」
「は、ハイっ!」
そして隊服の上は身につけず、二刀流の猪。
順番に竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助というんだそう。
「今回の鬼については何か聞いた?」
「少し聞いてまわりました。人間に近い姿をしているらしいです。そして動きが速い、とも聞きました。」
「ありがとう。それなら四肢を切り落としてから再生までの間に頸を斬り落とそうか。頸は私が斬れたら斬るから補助よろしくね。いざ私が斬れないとなると場合によって判断してね。頸を斬るのが最重要だから。」
「あ?俺様に指図すんな!」
と、今日初めて伊之助くんが喋った。
「ならここで死にな。」
「あ?」
「任務に四人呼ばれたってことはそこまでヤワな鬼じゃないってことだってのは分かるよね。しかも私は階級は甲で、風柱の継子。柱の次に強い立場なの。私が呼ばれたからにはきっと今日の鬼は只者ではない。」
「知らねぇわ!!行くぞゴラ。」
「すみません。いつもあんなんなので…」
「大丈夫。そのかわり死なないでよね。炭治郎、もっと話し方崩していいよ。これから一緒に戦うんだし。」
少し戸惑っていたが、そのうち気を許してくれるようになった。
◇◇◇
日が沈みきった頃、一体の鬼が現れた。聞いた通り姿は人間と近い。しかし動きがとても速い。
伊之助くんが斬りかかると、避けられたが手首は斬れた。十数秒後、手が再生する。
「炭治郎、再生速度はあれくらいだね。四肢を切ってから頸を取るのに十分時間はある。作戦通りに行けるね?」
「あぁ、行こう。」
炭治郎が斬りかかるも、鬼は木の上に登ってしまい攻撃は届かない。しばらくして降りて来た瞬間を狙い、左腕を切り落とした。
「い゛っ…」
鬼が声をあげる。痛いだろう。風の呼吸は数ある呼吸のうち鬼にとって最も痛いと言われている。
続いて斬りかかった炭治郎と伊之助の攻撃もしっかり入り、残るは右腕のみになった。
しかし鬼は戦うたび少しずつ覚醒していく。早いうちに頸を刎ねなければ。
炭治郎と伊之助は再生速度の速くなった鬼と対峙し少しずつ体力が削がれていく。少しまずい状況だ。
一人でやるしかない、と思った時だった。
あたり一面に稲妻が走ったと思えば、鬼の四肢と胴体はバラバラになっていた。
すかさず壱の型の構えをとる。
「塵旋風、削ぎ。」
上から下に叩き斬るような動きで鬼の頸を斬った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!