もう蝶屋敷にいられるのも今日で最後だし、病室のベッドを堪能しよう。
そう決めて、今日は布団にくるまっている。師範が迎えにくるので隊服もしっかり着ている。
この安らぎを乱す奴は斬首する、なんて師範のような物騒なことを考えている矢先、蝶屋敷の門周辺が騒がしいことに気づく。
「なにしてるんですか。」
「おうあなたか、足治ったか?」
「治りましたよ。今日退院します。あの、なんでアオイを抱えているんですか。」
「遊郭で任務だ。潜入するから女が必要。そんでこいつ。」
「アオイを離してください。離さないと斬首です。」
「お前不死川に似てきたなぁ。でも俺様が潜入するわけにもいかねぇんだ。わかるだろ?」
「私が行くのでアオイを離してください。」
すると、パッとアオイを放り投げる宇髄さん。
炭治郎達も行く、と宣言している。まさかとは思うが潜入?この三人が?
そのまさかだった。藤の花のお屋敷にお邪魔して、服を渡され別室で着替えて出てきた時のことだった。
「宇髄さん?何してるんですか?」
「何、って化粧だろ。ちょっとでも化けねぇとな。」
伊之助が下手くそな化粧を施された顔で見つめてくる。お願いだからこっちをみないで。
「結構、ひどい…ですね?」
「あ?精一杯やったわ。文句あンならやってみろよ。」
「人の化粧はできないんです。ごめんなさい。」
化粧台の前に座る。鏡に映った自分の顔に、程よい化粧を施してゆく。髪の毛はお店でやってもらおう。と一つに縛った。
「こいつら、どこが駄目だと思う?」
三人の顔はなかなかにひどいものであった。あまり化粧の知識はないが、少し改善はしよう。
「三人とも紅を落とせる?色が合ってない。もう少し薄い方がいい。あ、善逸はそのままの色でいいよ。少し拭いて。炭治郎はもう少し橙の方がいいかな。伊之助は桃色の!これ宇髄さんにやってもらって。」
的確に指示を出す姿に、宇髄さんは感動したように顎に手を添えていた。
「お前も女の子だな。」
「斬首です。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。